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4日間オリエンテーティング・ラン

私流"関東100観音参り" 

『サイクル・スポーツ』 1994年8月号リーダーズレポート投稿記事より

 昨年8月号のサイスポ誌リーダーズレポートに掲載されていた四国88ヶ所霊場ツーリングにヒントを得て、東京周辺の観音霊場を調べていたら、まさにどんピシャリのコースづくりが出来そうだ。
 ということで、春たけなわの5月10日愛車フジ・オリンピックで初めてのキャンプ・ツーリング旅立った. 寺の場所を探すのに予想通り手間どる

 ご存知の通り世に言う"100観音参り"とは四国遍路を別格として秩父の34所と、鎌倉、埼玉、茨城、千葉に広がる坂東33所、そして和歌山、奈良、京都、姫路にいたる西国33所の合計100カ所の霊場をお参りすることだ。
 それに比べるとすこしマイナーではあるが、関東には他にも札所がある。そこで中野(東京)の自宅を出発後、すぐ近くの武蔵野33所を経て、秩父34所に至り、帰りに関越道近くの児玉33所をめぐるという私流"関東100観音参り"が今回の目標だ.
 問題は著名な秩父の寺についてはほぼ詳しい地図があるが、武蔵野・児玉の札所に関するはっきりとした寺の位置図がないこと。
 そのため、寺の場所さがし(オリエンテーティング)にどのぐらい時間がかかるか見通せない。所要日数が4日ですむか、5日になるのか、分からないままの旅立ちとなった。
 ともあれ、5月10日朝7時半に出発。コース中には飯能から秩父への峠越えもあるので極力軽い装備を心がけ、バーナーや食料は一切なし。若干の着替えとレインウエア、テント、シュラフのみで18リットル・サイドバッグのワンペア架装だ。
 8時には練馬の環状8号線沿いにある武蔵野1番札所の長命寺に到着。山門横の6地蔵に旅の安全を祈願して、まずは順調なスタートを切った。  つづけて石神井公園そばの2番、3番を回り、いよいよ東京23区外へハンドルを向ける。
 昼までによく出歩いている保谷から東久留米、東村山の寺々12寺を経て所沢へ着いた。しかしこの辺りは車が多く1車線ぎりぎりの街道でかなり走りにい。この先が思いやられる。
 コンビニのおにぎりで燃料補給後、狭山、入間と回って夕方5時に飯能到着。
 寺探しのため3万分の1ぐらいの市街地図と首っぴきで走っているが、寺によっては卍マークすら載っていない。近所の人に聞きながら尋ね歩くといった案配で予想通り時間がかかる。
 飯能周辺には11の寺がかたまってある。そのうち、日高の27番の勝音寺で暮れかかってきた。入間川(高麓川)ぞいの広い公園を見つけテント設営にかかる。
 実はマジック・マウンテンのツーリング用テントを張るのは始めてで、ちょっとしたコツがわからず苦労してしまった。
 テントを買ったS・R・Cのショップのオニイサンから「パーツ確認のた、事前に組立ててみたほうがほうがいい」といわれていたのに、手抜きした結果がこの有り様。本来2〜3分で組上がるはずが、夜空の下で30分もかかったのである。
 今日の走行は102Km、合計26寺に参拝。
2Kmのトンネルを迂回したのが正解でした

   2日目の朝は、たっぷり睡眠をとったので(ソロキャンプの夜はすることがなくただ寝るしかない!)鳥の声とともに快調に目覚め、すぐ近くある日高町の立派な聖天院から参拝スタート。
 そして、いよいよ秩父の山岳地帯にさしかかる。目指すは標高500mの武蔵野33番の天王山竹寺。
 緑にかこまれ気持ちの良い舗装山道だ。しかし上りばかり続き、バイクを引っぱては進む。
 最後の1キロはついにバイクを置き徒歩でお参り。霊場めぐりの最後は結願寺というそうだが、感動を大きくさせるためか山中の厳しい道の奥にあるようだ。

Chichibu map cycle sport
 10時いよいよ次の秩父に向けて出発。
 秩父へはR299で正丸トンネルを抜けるルートが距離・高度ともに楽ではある。が、全長2Kmの自動車トンネルを走行するのにはとてつつもない根性がいるので、無理をせず伊豆ヶ岳を迂回する県道の山伏峠ルートをとることにした.
 天気がよく温度も上がり汗だく・・。最後は歩きとなったが、15Kmを1時間強でクリア。
 苦あれば楽あり、峠越え後の下りで時速55Kmの最高速を記録した。
 R299に合流して、正丸トンネルの秩父側出口を見たら、排煙がもくもくと渦巻いいる。やはりこのルート選択は正解でしたね。
 午後1時、秩父市に入る前の8番西善寺から巡拝開始。
 秩父札所はさすがによく整備されている。札所ごとに周囲の寺の案内図があり、道端にも案内板があって、ルート取りが楽である。
 それに34所のうち4寺を除けば、ほとんどが秩父市内に点在しているため、市街地の南にある武甲山を見て自分の位置を確認しながら次々と参拝できる。
 暑いので1.5リットルのペットボトルに水を詰めながら飲んでいたが、29番長泉院近くの山からのわき水はまさに絶品の味わい。
 ちなみにツーリング中は、谷川の水とかほとんど生水ばかり飲んでいたにもかかわらず、腹の調子は快調。我ながら胃腸の丈夫さに驚く。
 秩父で感心したのは、行き交うとき地元の人が(子供だけでなく、時には大人も)親しく挨拶をしてくれること。確かにそこいら中に『みんなであいさつ』という看板が立っている。地域運動として熱心に奬められているようだが、秩父を訪ねる旅行者の心を和ませてくれるものだ。
 この日はR140沿いの、荒川村にある30番法雲寺で午後6時を過ぎた。それから苦労して食堂を探した挙句、お好み焼き屋で晩めしにありつく。
 すでに日は落ち、真っ暗になってしまったのでキャンプサイトは行き当たりばったりで荒川に接する崖の上にして、手早くテント設営。
 マジック・マウンテンのテントは、一度コツがわかると、タープ張りを含め、ほんの1分ぐらいで組み上げられる。なんとよくできた製品だろうかと、ホトホト感心。 今日は合計26寺にお参り。
帰りはしんどかったが、自信をつけたぞ!

 3日目はとうとう雨。天気予報とおり、昨夜からしっかり降りつづいている。雨具を着込み秩父市の西側の札所をまわって北上する。
 自分としては、レイニーランは好きだ。向かい風よりはずっとマシだと思っている。ただ、地図が濡れて見にくくなるが困る。今回は、何気なしに持ってきたファスナーつきのビニールケースが大いに役だった。 秩父札所の最後は、皆野町の山中の34番水潜寺。秩父市中心部から10Kmほど離れた処にあり、11時過ぎに到着した。
 参拝を済ませ、マイクロバスの巡礼の団体さんから声援をうけながら北上。一路つぎの児玉をめざす。この頃には雨も上がり、ちょうど見頃の薄紫の花を咲かせている桐の木々を楽しむ。
 32番光福寺を皮切りに、児玉33所巡りに入る。31番長泉寺は、紫と白の見事な藤の花に埋っていた。
 児玉の霊場はこじんまりとした寺が多い。また住職のいない無住寺がけっこうある。
 関東平野の北端に位置するこの辺りは、ほとんどフラットな道ばかりで順調に巡拝をこなす。本庄市の20番正観寺を5時半にお参り。この日はなんと計38寺をマークすることができた。
 ところが、きりよく(!?)最後にパンク。さて修理をどこでするかなと見回すと近くの家の庭先に水道、バケツがあり家人に話すと快く場所を貸してくれたので、大助かりであった.これも観音様のご利益なんでしょうね.  その後、利根川の河川敷きに広い芝生の絶好のテントサイトを見つけ、コンビニ調達のカレーとかき揚げ弁当の2人前を平らげる。夜はまさに満天の星を独り占めにして楽しんだ。
 4日目。快晴。早朝から残りの10の札所を回る。
 午前11時、最後の美里村の17番光厳寺を参拝し、3霊場100観音巡りを達成。
家へ「今晩帰宅できる」と電話連絡をした後、早く風呂に入りたい一心で関越自動車道沿いのR254を東京に向かう。
 この国道は丘陵地帯を通るバイパスが多い。それだけに長いアップアンドダウンがつづき、これまでにたまった疲れもあって、とてもしんどいランとなった。
 さらに暑さも加わり1時間ごとに休憩しながら、約100Kmを6時間で走破。夕方5時、無事に中野の自宅に帰り着いた。
 使用車は前輪ブレーキパッドが半分ぐらい減っただけでトラブルもなし。自信をつけたので、目下あたためている次のツーリング企画”日本一周100岬巡り”を実現させようと目論でいる。
データ
・走行距離・・・390Km
・実走行時間・・・25時間
・実走行平均・・・時速15.7Km
・費用・・・6000円
・車種・・・フジ・オリンピックOT21
 走行はサイクルコンピューターによるもの。日中の活動時間は4日間で38時間ほどであり、参拝、見学、食事、休憩などけっこう時間をくっていることが分かる。それにしても、平均速度が遅い(歳相応か!)


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First Drafted Oct 10, 1997
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