このところ外国ツアーの体験レポートが多く、日本の聖地ともいえる北海道の記事があまりない。そこで最新の情報を読者にお伝えしたいと思いペンをとった。私はただ漫然と北の里を走ったわけではなく、かねてより日本の岬で訪ねてみた100岬を選び、その内の北海道25岬を旅した。
自然あふれる大地、快適なツーリング環境など全てが期待以上の素晴らしさであった。
左回りコースに決定
東京から北海道へのルートは,フェリーのサンフラワーに一度乗りたかったので起終点を苫小牧に決定。初めに目玉の道東をまわると自然に左回りとなり,もし予定の21日間をオーバーしそうになったら函館など道南をカットし苫小牧に戻り易いと考えた。それと、この回り方だと常に陸側の路側を走ることとなり,海側より路側帯幅が全般に広くランに好都合であった。ただし出逢うサイクリストから聞くと、どうも右回りが一般的だそうで、今回は紋別から宗谷までのオホーツク国道で強い北西の向風になんと1日半200キロの間あおられ、この時ばかりは右回りが不正解だったかなと思うこともありました。結局は21日間走って向/追風は半々であり、そう間違ってもいなかった。
6月24日真夜中にサンフラワー「えりも」で出航、バイク20台に自転車 2台ぐらいのツーリング客で30時間かかって苫小牧に翌々日早朝 5時30分着、愛車の点検をし,直ちに襟藻岬にむけスタート。道路の広さと交通量の少なさ,延々と続く日高のサラブレッド牧場に初めから感激し,これぞ北海道と自然にペースがあがる。
装備は25キロ
今回は日当たり120〜150キロ走る計画なので宿の予約は一切せず1日走れるだけ走ってキャンプするつもりのため、キャンプ一式、ガソリンコンロ、燃料1リットル、米2キロ、
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缶詰類、味噌汁の素、ラーメン、酒1リットル、調味料、炊事用の水2.4リットル・タンク、雨具、着替、工具などでリアサイドバッグ、フロントバッグあわせて約25キロと結構な重装備となった。途中日本一周を含め多くのサイクリストに出合ったが、大抵は私のよりは軽量な装備で朝晩の自炊までやる人は少ないようである。昼は土地の名物を探し、昆布入りラーメン、蟹・貝・うにのたっぷり入った海鮮ラーメン、ホタテカレー、イクラどんなど楽しんだ。
ただ,オホーツク沿岸,石狩以北の日本海側では街に入っても食堂が殆どなく食品店を見つけてパンでも買っておかないと昼メシを逃すことになりかねないので要注意。初めのうちは夕方6〜7時まで走り、海岸、河川敷、公園などで野営をしましたが、そのうち大抵の町村にキャンプ場がよく整備されていることがわかり、後半はそれ等を利用した。中でもオホーツクの紋別のそばのコムケ湖国際キャンプ場などは広くきれいな芝生、圧倒されるような自然環境に恵まれた所であり、管理棟には温水シャワーまであるという優れたもの。(一張り200円) そのほかでは東大沼キャンプ場、長万部キャンプ場など奬められて利用しましたがどこも立派で十分な設備があり町営のため無料なのも魅力です。なお私は昭文社の定番「2輪車ツーリングマップ・北海道版」を使いましたがキャンプ場もほとんどが掲載されておりコンパクトなサイズで使い勝手もよく大変重宝しました。
やはり根室、札幌、函館など都会地ではユースホステルが便利で前日か当日予約電話し泊まることができた。また道南の熊石では午後大雨に会いとてもテントを張る意欲がなくなり夕方町営の国民宿舎に駆け込んだら運よく泊まることができ、一人だと融通がききなんとかなるもんだなという感想です。
都会地では24時間サウナを見つけると便利であり、私はツーリング最後の日の苫小牧で励明薬湯というサウナ、レストラン、ビデオシアター、休憩室つきの漢方湯の保養センターを地元の人に教えてもらい利用しましたが(泊まり料込みで2千800円)、大変気に入りました。結局21日間で、キャンプ14泊、YHなど7泊したことになります。
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一日10時間走行
キャンピングの日は、なにしろこの時期の北海道の日の出が早く4時には明るくなるので起きだし朝飯の準備、食事、後片付け、テント撤収、愛車への荷物のくくりつけなどしても5時半から6時には出発できます。私のペースは25キロ(90−100分)で休憩を取る走り方なので午前中に3セット75キロ走り、昼食をとって6時か7時までまた3セット走ると所要9−10時間、150キロ走る事ができました。
平均車速は 17〜18キロ/時でとくに早いわけでありませんが、なにしろペダルを踏む時間の長さで稼いだ感じです。
旅の前半はペースを掴むために気合いを入れて走ったのでほぼ毎日判でおしたように 150キロになりました。このおかげで、後半はスケジュールに余裕ができ、ゆっくりと観光、温泉、登山,知人訪問を楽しむことが出来た。ソロキャンプだと夕食が終わると夕陽を見るぐらいでなにもすることがなく(ラジオで選局できるのがロシア放送だけといった場所が多かったし)9時には寝袋に入るといったパターンで寝不足にはなりません。ただ,YHなどに宿泊すると朝食が7時半とか8時なのでどうしてもスタートが遅くなるのが時間面での欠点となります。
どこも魅力のコース
今回は最も海沿いのルートを走ったわけですが、釧路から落石への霧多布ラインと太平洋シーサイドライン、稚内から天塩区間のオロロンライン、積丹半島の横断道などを除き全行程の90%は国道を走ることになります。浦幌から釧路へのR38、札幌から小樽へのR5、根室から厚床へのR44など2桁以下の国道ではさすが交通量が多いいが、それでも道外にくらべれば大したことはなく、ほとんど1メートルはある路側白線と歩道の間を車を気にせず走れる。
| 交通事故日本一の北海道ではあるが車が圧倒的に少ないこともあり、自転車を追い越すドライバーはかなりマージンをとって走ってくれるので関東で常につきまとうヒヤリ感はなかった。ただ3桁位になっているんじゃないかと思う車の速度による風圧には注意がいります。路面も落下物など少なく、3週間でパンクは1回だけと幸いでした。
ちょうどコンブとりの最盛期にあたっており,早朝採ったコンブを干場へ運ぶトラックをよく見かけましたが、強風で飛ばされるのか道路にコンブが落ちているシーンなどまさに北海道らしかった。
私にとってのコースの難所はやはり高い峠であり、左膝を痛めていたこともあり唯一敬遠したのが知床峠で、かわりに標津からダイレクトに斜里に入る根北峠を選びました。それでも標高ゼロから600メートルへの登りが30キロあり、最後の4キロは愛車を押し2時間半かかりました。下りの20キロはノンストップで30分と絶快適! 積丹半島の海沿いルートは来年開通するそうで、今回は神威岬を訪れてから古平までもどり当丸峠越えましたが、下りでは自己最高の65.2キロ/時のスピードがでました。こんな速度で暗いトンネルをノーブレーキで突き抜けるスリルといったら・・・だから自転車は止められないとつくづく思いましたね。『ツーリングの極意はダウンヒルにあり』と考えれば峠の登りの苦労も報われます。ただ、予期していないところに峠があるとガックリくるもので、今回あまり詳しくはルートチェックをしていなかったので、長万部から洞爺湖のある虻田の区間は普通の道と思っていたら静狩峠というのが現れそれで終わりかと思ったら延々とアップダウンが続きもう泣きっ面に蜂ということもありました。
襟藻から広尾への黄金道路、留萌以南の日本海沿岸などではもう無数、無限ともいえる覆道を含むトンネルが続き、それも2〜3キロ・スパンのものも多く、トンネルが嫌いだ好きだと言っておれなくなります。トンネルを抜けると目前のコバルトブルーの海へダイブするような下りも多くこれも絶快調。
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健在なりツーリング仲間
行き逢うサイクリストとの情報交換、ほとんどのバイク(セミ族といわれるカブクラスも多い)が送ってくれるガンバレサインなど北海道ならではの仲間意識が魅力です。
6月中旬に東京をたった足立さん、5月12日に大阪をたった青年、バイトしながらという熊石まで一緒に走った茨城からのサイクリストなど、やはり日本一周派はそれなりの汚れと貫禄がありました。
それと感銘を受けたのがシニア・サイクリストの健在なこと。羽幌の手前で会った茨城那須の矢口さんといわれるご主人(72才)と奥様は、稚内から苫小牧まで6日間で走る途中だそうで、もう驚きを越しましたね。それも変速ギアなしのチャリンコながら、涼しい顔をされてさっそうと走って行かれたのが印象的でした。(R232もなだらかながら結構登り下りが続くルートなんですね) YH札幌ハウスでは沖縄を含め日本中回られ、最近は毎夏1月半北海道に来ている名古屋碧南の超ベテランサイクリスト(77才)に出会い、いろいろ教えて戴きました。いつも大事な愛車を枕元において寝られるそうで、その気持の若さはすごい!
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地図を調べていたりすると車を止めてルートを教えてくれる親切な地元の多くの方々にも感謝しつつ、ロマンの北海道を満喫できた21日間の旅でした。来夏あたりもその魅力に浸ることになりそう! 最後に私の選んだベストポイント10を紹介します。
・雄大な十勝河口
・野付の15Kにおよぶ原生花園
・知床岬にいたる秘境の山々と海岸線(船)
・コムケ湖の自然と夕陽
・端正で北の厳しさを感じさせる利尻
・岬のなかで最も主張を感じた神威岬
・熊を恐れながら雨中入った平田内露天風呂
・函館山からの360度眺望
・恵山岬公園と一人ではいった水無海浜風呂
・駒ヶ岳そのものの眺望と登山と山頂のお釜
データ
・総走行距離・・・2634キロ
・ツーリング日数・21日
・総費用・・・・・116,000円
フェリー往復2千800円含む
・使用車・・・・・フジオリンピックOT21
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