『エヴァンは、めぐらされたフェンスに沿ってピックアップ・トラックを走らせた。そこはヒューストンのアップタウン、ガレリア地区の端で、年配のオイルマネー成金と若いIT成金をあてこんだ高級店やレストラン、ケータリング・サービス業者がひしめいている。フェンスに囲われたこのマンションは、<トスカーナ松>と名づけらえていたが、実際にはこの地方によく見られる背の高い"湾岸のテンダー松"が影を落としていた。
エヴァンはオフィスの駐車場に車を停めて待った。警察車両が来るだろうか。だが出入りするのはベンツとBMWとレクサスばかりだった。さらに一時間たってから、シェイディがガードマンのブースから歩いて出てきて、オンボロのトヨタに向かった。乗り込むと、がたがたと敷地を出て行った。エヴァンはあとを追った。相手はウェストハイマーから、ヒューストンの中心に位置するリバーオークスへ向かった。
最初の交差点でシェイディの隣に車をならべた。相手がこちらに気づくのを待ったが、ヒューストンで運転するほかの人々と同様、涸れはとなりのレーンのことなど気にも留めなかった。』
--COMMENT--
これまでのユーモアたっぷりの図書館長ジョーダン・シリーズや素人判事ホィット・シリーズとはうって代わって、若いドキュメンタリ映画作家が強力な犯罪グループに突如襲われ、今まで知らなかった両親と秘密組織のつながりを追う"超ハイスピード・サスペンス"。ただし、あまりにプロットが込み入りすぎのきらいがある。
抜き書きは、追われる主人公エヴァンが、昔助けたシェイディに支援を頼みに訪ねるシーン。そう著者の作品は、一貫してテキサスのヒューストンが舞台になっています。元CIA工作員の"古い青のフォード"と彼の自宅にあった"燦然とかがやくドゥカティ"、逃走に使うために盗む"子どもが地元高校の優等生であることを示すステッカーがウィンドウに貼ってあるグレーのシボレー・マリブ"、次に無断借用する"赤いフォードF-150トラック"、ロンドンに飛び使うジャガー、壮絶なカーアクションを展開するCIAのリンカーン・ナビゲーターとタウンカーなど。(2008.9.28 #567)