Andrews, Phil /フィル・アンドリュース
オウン・ゴール | MGB | OWN GOAL (C) 1999 | 玉木亨訳 角川 2001 |
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『M55号線を走りながらギアについているオーバードライブの小さなボタンを押した時、自分がどうしてMGBを買い、ジャック・コックスがシティにやっているように定期的に金を注ぎ込みつづけているのか、あらためて思い出した。後輪の加速、湧き上がるパワー、法定速度内で走っていても時速90マイルで飛ばしているような気分にさせられる地面すれすれのバケットシート。ベスにいつも言っているとおり、万が一売るようなことになれば、払っただけの値段はきっとつくだろう。もちろん、毎月ニックに払っている修理代ではなく、車本体を買う時に払った値段ということだ。
ファイルド地方の緑あふれるなだらかな田園風景のなかから、徐々にブラックブール名物のタワーが姿をあらわした。個人的には、季節外れのブラックブールのほうが好きだった。不死身になった気で轢いてみろといわんばかりに車の前に飛び出してくる酔っ払いや、矯正院行きが確実のマンチェスターやバーミンガムからきた不良少年の数が減るからだ。だが、アイルランド海から吹きつける風でチップスの紙容器やビールの缶がゴールデン・マイルを転がって行く景色は、一年中変わらなかった。』
--COMMENT--
初めて手にした作家です。離婚協議中で失業中のさえないスティーヴン・ストロングが英国サッカージームチームからスター選手にふりかかる事件の調査を頼まれる。会話にユーモアがある小粋な探偵ものと言えます。
この素人探偵の車が、なんとクラッシクもクラシックのMGBだ。よほどほれ込んでいるのか、何度も文中に登場してくる。引用したところで、オーバードライブがついているということは、オートマチックのミッションみたいでちょっと残念。
(2002,1,24)
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