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ARLEY,CATHERINE /カトリーヌ・アルレー

罠に落ちた女 プジョー604、ヴォルボ UNE FEMME PIEGEE , (c) 1982 創元推理文庫 、 1983

プジョー604のラジオでは混信がひどくてニュースが聞き取れなかった.セリーヌ・ディディエは手あたり次第にスイッチを切り替えて、イタリアの局の干渉がないフランス放送をキャッチしようとしたが、どの波長も雑音だらけだった.
「あきらめろよ!」 ジャン・ラルサンはつぶやいて、ハンドルの上へ首を伸ばし、雪道をのぞき込んだ.
「なぜあの村で泊まることにしなかったの?」
「オルメアに部屋をとってあるからさ.タンドの峠まで着けば後は楽だよ.イタリア側に下るだけだかだから」
「でも、さっきラジオも言っていたじゃないの、雪崩の危険があるって.それにもうすぐ夜になるは」 ・・・・・・
「お願いだ.すこし黙っていてくれよ!」
彼女は黙った.忠告すればするだけ相手が苛立つのがわかっていたからだ.
その時、雲の垂れ込めた空を稲妻が走ってほとんど同時に雷鳴が轟いた.それはあたり一面にこだましてすざまじい音となった.度を失ったセリーヌは片手で男の膝にしがみついて叫んだ.
「ジャン!」
男はいきなりブレーキをかけた.車は大きく揺れて止まった.
「どうしたの?」彼女は叫んだ.
「パンクしたらしい.きっと後ろの右側だ.ちょっと降りてみてくれ」
恐ろしい雷鳴にまだおびえていて、彼女は男の顔を見つめたままだった.男は苛立った.』
--COMMENT--
『わらの女』映画化の作者、仏女流作家アルレーのミステリーの冒頭の部分.
自動車販売会社社長のジャンと愛人のセリーヌが乗るプジョー604から事件が始まる. アルレーはいわゆる「悪女」ものが多いが、これは人の好いセリーヌが難局をなんとか乗り越えてハッピーエンドになる.(92/08)

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