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BAGLEY ,DESMOND /デズモンド・バグリー

サハラの翼 トヨタ・ランドクルーザー FLYAWAY , (c) 1978 早川 、1989

『バーンのいう“肥壷”とはトヨタのおんぼろランドクルーザーであり、高速道路で多重衝突にあったような有り様のものだと判明した。
2千マイル以内に高速道路はないので、それはありそうにもないことだった。
バーンは私の表情を見て、「荒れた土地なんでね」と、それがさもぴったりの説明のような言い方ををした。 しかし、エンジンは快調に動いたし、タイヤもしっかりしていた。 』
--COMMENT--
アフリカを舞台として繰り広げられる冒険サスペンスの山場となるアルジェのタマランセットからテレネ砂漠の秘境への旅にランドクルーザーが登場する。
 ランドクルーザーのオーナーであるバーンは、第2次大戦の時アルジェに不時着した元英空軍パイロットで、サハラの魅力に捕らわれ35年にわたりトゥアレグ族と生活をともにしている。そんなバーンが、ちょっとしたミスで生死を分けるきびしい自然の中で足として、というより友として暮らしてきたクルマである。
 旅の途中で、ボディにライフルを打ち込まれたりデフギアトラブルで立ち往生するランドクルーザーを砂漠から引き上げ、何とか修理してしまうくだりは登場者とバグリイのクルマへの愛着をよく現している。
さて、イギリス人の作者は、彼らのランドローバーではなくランドクルーザーを登場させたのでしょうか。(90/09)

ヘンドリックスの遺産 WINDFALL , (c) 1982 早川 、1991

『 飛行機は午前8時すぎに着陸し、そんな早い時刻でさえ太陽は強烈だった。
スタフォードは鼻をくんくんさせて、アルジェリアで最初に体験したのと同じ、微かに香辛料の混じったようなほこりっぽいにおいを捉えたーアフリカのにおい。入国手続きをして税関を抜けるとハーディンが待っていた。
 「外に車がある。鞄をもとう。ここのポーターにもたせてはいけない。法外なチップを要求してくるんでね」
 二人はハーディンの後に続いた。スタフォードは、案内された車をあっけにとられてみつめた。そいつはニッサンのバンで、サンルーフ付きの8人乗りだった。縞馬のような模様を派手に塗りたくってあり、うすいほこりをかぶっているのがはっきり見える。
彼は言った。「なんの真似だ。ベン! 目立たないようにしているとき、サーカスみたいな車を用意するとは、こんな奴だと1マイルさきからだってわかってしまう」
 「心配無用」とハーディンは請け合った。「こんなサファリ用のトラックは、ここでは犬についた蚤と同じくらいありふれていて、どこへでもいける。』

--COMMENT--
バグリー得意のアフリカ・ケニアでの事件を追うスタフォードとハーディン。
車は文庫本の表紙になっているニッサン・サファリで正解!
 邦訳の最初は1985年に発行した単行本で、その時のカバーはどうも車ではなかったように思います。  この「ヘドリックスの遺産」、「爆走大陸」、「南海の迷路」がバグリーの最後のシリーズになったわけで、過酷でダイナミックな自然を背景とした本流の冒険小説が、もう読めないとは残念。 (91/10)


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