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Banks,Iain /イアン・バンクス

秘密WHIT (c)1995レンジ・ローヴァー高儀進訳 早川 1996

『ヨランダの上機嫌は、飛行機がエジンバラ空港に着くと消し飛んでしまった。レンタカーをどこにとめたのか思い出せなくなってしまったのだ。
「いったん返してまた別のを借りるより、ここに置いておくほうが手っ取り早いと思ったのよ」とヨランダは、また別の車の列のあいだを足を踏み鳴らして歩きながらいった。 私はカートを押しながらついていった。「どんな車だったの?」と私は尋ねた。私にとっては、どうということはなかったのだが、車は車だ。
「わからない」とヨランダは言った。「小さい。そう、小さめ」
「車のキーでなにかわかるんじゃない?」
「排気管のなかに隠したのよ」とヨランダは、ややばつが悪そうに言った。「そうやると、やたらに鍵を持ち歩かなくてすむからね」
何台かの車の後部の窓に、レン
タカー会社のステッカーが貼ってあるのに気づいた。
「会社の名前はわかってる?」 「いいえ」
「駐車場中にアルファベットの書いてある柱が立ってるわ。この近く−?」
「車の色は?」
「赤。いえ、青よ・・・・くそっ」ヨランダは途方に暮れた顔をした。
「どんな車のあいだに停めたか、覚えている?」
「現実的になりなさいよ、アイシス」
「あら。その車は移動したかもしれないけど、まだここにあるってこともある!」
レンジ・ローヴァー。一台はレンジ・ローヴァーだった。もう一台は。背が高かった」』
--COMMENT--
イアン・バンクスも初めて手にする作家だが、スリラー、SF、冒険小説など幅の広い著作がるのだそう。読んだ感じでは、うーん、結構異色なストーリー立てのコンテンポラリーなんだけど、冒険小説とも言える構成になっている。スコットランドでテクノロジーを拒否するカルト教団の後継者の少女が、ロンドンに初めていかされて人を探したり、教団の暗部を暴く。こんなプロットを思いつく著者のクリエイティビティに感心しますね。
主人公アイシスを助けてくれる大叔母ヨランダとのかけあいのシーンが上記。こんなコメディタッチが楽しめる。 (1998/08)


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