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BOURDAIN, ANTHONY /アンソニー・ボーディン

シェフの災難トヨタBone in The Throat, (c)1995西田佳子訳、早川書房,1997

『乗ってきたトヨタが駐車場の真ん中でぽつんと待っていた。中の温度があがって息がつまりそうだった。ビニールのシートが短パンから出ている脚にふれると、火傷しそうに熱い。窓を全て開け、カーステレオにカセットテープを入れた。マーヴィン・ゲイが地下の放射能について唄っているのをききながら、ハーヴェイは車を急発進させて駐車場から出た。気持ちいい風を受けながら、テープに合わせて歌を口ずさみ、ハンドルを指でたたく。駅を通り過ぎたところで左に曲がり、短い橋を渡ると、そこはアイランドパークだ。右に曲がって、ロングビーチとアイランドパークのあいだの狭い水路と並行してして走る脇道に入る。水辺にはバーやレストランが軒を並べていた。駐車場は大型エンジンのぴかぴかの新車でいっぱいだ。ハーヴェイはロブスターの卸売り店の前をとおりすぎ、日干し煉瓦ににせた建材で作った教会のような形の建物の前にある小さな駐車場に入った。建物の前にはサボテンの形の看板がたっている。“メリサ・グリル”と書かれていた。』
--COMMENT--
 中野区図書館をぶらぶらしていて選んだミステリー。マンハッタンのリトル・イタリー街にあるしょぼいレストランのスーシェフ、トミーにふりかかるマフィアがらみの災難。 街の様子とか、レストランではたらく人たちの舞台裏がいきいきと描かれているし、ユーモアたっぷりの楽しい会話、人のいい主人公のキャラクターなどなかなかの作品でした。上にでてくるトヨタは、そのレストランのオーナーの車ですが、オーナーがトヨタでは、残念ながら、いかにオンボロレストランであるか想像がつきます。マフィアを追うFBI係官の車が、なんと“鮮紅色のツーシーターのアルファロメオ”なんですが、登場するたび、カーステレオでかけているローリング・ストーンの曲が違うんですね。「ジグゾー・パズル」とか「メモ・フロム・ターナー」とか・・著者の好みが伝わってきます。(1999/05/29)


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