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Brown, Dan / ダン・ブラウン

ダ・ヴィンチ・コードスマートカーThe Da Vinci Code, (C)2003越前敏弥訳 角川 2004

『ドゥノン翼の西端で警報が鳴り、近くのチュイルリー庭園にいたハトが四方へ散ると同時に、ラングドンとソフィーは建物からパリの夜へと駆け出した。ソフィーの車へ向かう途中、パトカーのサイレンが遠くで響くのが聞こえた。
「あれよ」ソフィーが言って、獅子っ鼻を持つ赤い二人乗りの車を指さした。
冗談を言ってるのか? ラングドンはこんな小さな車をいままで見たことがなかった。
スマートカーよ」ソフィーは言った。「リッターあたり100キロ走るは」
ラングドンが助手席に飛び乗るなり、ソフィーはスマートカーを急発進させ、縁石を越えて砂利敷きの分離帯に乗り上げた。ダッシュボードをつかむラングドンをよそに、車はそのまま歩道を横切り、態勢を立て直してカルーゼル広場の小さなロータリーにさしかかった。』
--COMMENT--
 世界で7000万部、日本で1100万部という、ご存知!!超話題作。どうもこの手のベストセラーものは敬遠してしまうのだが、図書館書棚にごろごろ溜まっているのを見つけて(区立図書館には単行・文庫あわせて30セットも所蔵、発刊後4年もたった今どきは借り手もほとんどない)手にしてみた。
 事件が起きてたった12時間の物語にしてはずいぶんと饒舌だが、カトリック諸国で賛否ともども話題になるのは分かるとして、キリスト教の教義にそれほど関心があると思えない日本でなぜそんなに売れたのか不思議だ。よほど角川のプロモーションが巧かったのかしら? 随所の不自然なプロット、ご都合よすぎるストーリー、主人公たちの人物描写がまるでなってない(最後にラングドンとソフィーがいい仲になるくだりはまるでとってつけたよう)など、ミステリとしてみると出来はいまいちのように思えてならないのだが?
 抜き書きシーンは、事件の発端となったルーヴル美術館から二人が逃げ出すところ。smart(普通は"カー"はつかない)は、当方コレクションでは初顔。ただしスマート・クーペ(01年〜02年 エンジンは600cc)でも、カタログ燃費は19Km/Lでとても100Kmなんて走るわけありません。
 フランス司法警察差し向けのシトロエンZX、オプス・デイが用意する"黒のアウディ"、ヴァチカンの公用車"小型の目立たないフィアットの黒のセダン"、オートマティックしか操作できない主人公がてこずるマニュアル車のタクシー、宗教史学者の邸宅のガレージにあるコレクション―フェラーリ、ロールスロイス、アストンマーティンのスポーツクーペ、年代物のポルシェ356と、逃亡に使うレンジローヴァー、おまけに同公爵がイギリスの飛行場に置いている"スモークガラスとホワイトウォールタイヤのジャガー・ストレッチリムジン"などなど。まぁこれでもか!これでもか!とばかりのゴージャス志向好きだこと。(2008.7.6 #553)

天使と悪魔アルファロメオ155ツインスパークスTANGELS and DEMONS (C)2000越前敏弥訳 角川 2003

『四台の無標識のアルファロメオ155ツインスパークスが、滑走路から離陸する戦闘機さながらの勢いでコロナーリ通りを飛ばしていた。乗っているのは十二人の私服スイス衛兵で、パルディーニのセミオートマティック、狭範囲用の神経ガス容器、長距離用のスタン銃を装備している。三名の狙撃兵はレーザーサイトつきのライフルを携帯していた。
 先頭の車の助手席にすわったオリヴェッティが、後部座席のラングドンとヴィットリアに顔を向けた。目が怒りに燃えている。「あなたは信頼に足る説明をすると約束したが、まさかいまの話がそうだとでも?」
 ラングドンはせまい車の中で押しつぶされそうな感覚を味わっていた。「おっしゃりたいことはよくわかり――」
「わかっていない!」オリヴェッティは語気を荒げはしなかったが、声を三倍に強めて言った。「私はコンクラーベの夜に精鋭の兵士を十二人もヴァチカン市国の任務から外したんだぞ。それも、見も知らぬアメリカ人が400百年前の詩とやらについて垂れた講釈に振り回されて、パンティオンに張り込ませるためだ。おまけに反物質兵器の捜索まで部下たちの手に委ねてきたとは」』
--COMMENT--
『ダ・ヴィンチ・コード』の3年前に発表されたラングドン・シリーズの第一作。秘密結社の陰謀、24時間というタイムリミット、美術史の謎解きに挑む主人公…と、同書とそっくりの構成と展開。私にとってはあまりに劇画風すぎていまいち。
 引用は最初の教皇候補が処刑される教会へ向かうシーン。ラングドンのサーブ900Sなども登場。(2011.5.16 #687)


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