lagoon symbol
BURKE, JAMES LEE /ジェイムス・リー・バーク

ブラック・チェリー・ブルース ホンダ、トヨタ・ジープ
ランドローバー他
BLACK CHERRY BLUES , (c) 1989 角川書店 、1990

『主が入口のドアを開け、閉まらないようにいた切れでつっかい棒をする。もやとひんやりする大気、それに木々の香りが店内に流れ込んだ。店の前に1台のホンダが止まったのはそんな時だった。風防ガラスに降りかかる雨をワイパーがしゅしゅと払っている。
オリーブ色の肌に艶やかな漆黒の髪のインディアンの娘が車内からとびだし、店内に駆け込んできた。』
『クリートの問題をこれ以上むし返すのはいやだったし、彼の重荷を背おわさせられるのも願い下げだった。一緒に表のトヨタのジープまで歩いて行き、彼女のために運転席のドアを開けてあげる。陽ざしの歩道の濡れた部分がどんどん乾いている。山の尾根の松の木が空をバックに緑ますますあざやかだった。』
『長袖のフランネル・シャツという姿で玄関ポーチにすわり、2杯目のコーヒーを飲みながら新聞に目を通す。数分もしないうちに、銃器掛けに毛針釣りの竿を入れるケースを載せたランドローバーが玄関前に止まった。降り立ったのはダン・ニガースキだった。ベルトのないジーンズに陸軍のセーターをまとい、鱒用の毛針に覆われたくしゃくしゃの帽子をかぶっている。』
『疲労がどっと襲って来る。止めたトラックに戻り、薄明りのもと、濡れた野原にはさまれる道路を走り出す。バックミラーの中に黒いウイリス・ジープを認めたのはそんな矢先だった。第二次大戦終了直後に改造され、売り出されたクラシック車だ。道路が濡れ、土ぼこりもたたないとあって、ハンドルを握るドライバーの背の高い輪郭がはっきりと伺える。相手がスピードを増し、こちらのバンパーすれすれに近寄って来る。』

--COMMENT--
 アメリカの新人作家らしく、クルマについては上記のほかにいろいろ登場してきて、各々の所有者や情景を鮮やかに描き出している。
 加えて、上の引用からもおわかりのように、情緒的、叙情的ともいえるタッチの新しい幻想的な小説スタイルをもっていることが注目される、力のある作家とおもえる。1989年度アメリカ探偵作家クラブMWA最優秀長編賞作品。(91/05)

シマロン・ロ−ズ32年型フォードCIMARRON ROSE (C) 1997佐藤耕士訳 講談社 1999

『開け放った窓から、低く唸るような巨大マフラーの音が聞こえてきた。ダールの32年型フォードだった。その後ろには、長くのびた排気管や馬力をアップしたエンジンを備えた車数台と、チョッパー・タイプのハーレー・ダビットソンが控えていた。
 車寄せに入ってきたのはダールの車だけだった。これみよがしに剥き出しになったクロームメッキ仕上げのエンジンは見事にチューンアップされ、たとえエアクリーナの上に1ドル銀貨が置かれたとしても、ずり落ちることはなさそうだ。取り巻き連中は路肩から私の敷地の芝生にかけて車をとめ、花壇の縁をタイヤで踏み潰した。彼らはエンジンを切るとタバコに火をつけ、めいめい車やピックアップ、バンやバイクに寄りかかった。
まるでこうきょうの道路に物理的に接してさえいれば、どれほど勝手なことをしようが自由だといわんばかりに・・。』

--COMMENT--
 テキサス・レンジャーあがりの弁護士ビリー・ボブ・ホランドが主人公となる新シリーズ第1作で、1998年MWA最優秀長編賞を獲得。テキサスの田舎町でおきた少女殺人事件を中心にに地元の警察官、有力者、不良たち・・とからんでくるハードボイルド。うーん、ビリー・ボブの暗い蔭がしょちゅうと言っていいぐらい出てくるのだが、その想いについていきにくい。
 上記はさしずめ暴走族の連中がおしかけてきたシーン。ビリーはアバロン、有力者の妻の"白いポルシェ・コンバーチブル"・・が登場する。(2002/09/08)


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