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Cabot, Meg /メグ・キャボット

サイズ12はでぶじゃないBMW2002Size 12 Is Not Fat (c)2006中村有希訳 創元 2010

『「行くわよ、クーパー!」受話器を置くと同時に、わたしは宣言した。「調べにいかなきゃならないの、いますぐ!」--中略--
だって本当に、レイチェルの一件の方がずっと大事だもの。
 だから、わたしはこう言った。「もういいわよ。ハンプトンズまで、電車があるでしょ。いまからネットで時刻表調べるから──」
 彼が降参したのは、そうするしかわたしをおとなしくさせる方法がないと気づいたからか、わたしがロングアイランド鉄道で危ない目にあわないかと心から心配してくれたからか、わからない。もしかすると、ただクレイジーなけが人の女をなだめようとしただけかもしれない。
 なんにしても、わたしが身なりを整えたときには、クーパーは車を─74年型BMW2002で、いいいBMWというのは新車だけだと信じている近所のの麻薬の売人たちは、しょっちゅうからかってヒューヒューと野次をとばしてくる─ガレージから出してきていた。クーパーは浮かない顔を─それどころか、そもそもわたしに同居するように誘ってしまったことを呪っているに違いない。』
--COMMENT--
『プリンセス・ダイアリー』を生み出したメグ・キャボットの大人向け初コジー・ミステリ。元ポップスターでニューヨーク大学生寮の副寮母の"サイズ12"ヘザーが、寮内でおきた学生の転落死亡事故に不審をもち犯人探しをする。ジャネット・イヴァノヴィッチの「バウンティ・ハンター・ステファニー」とテイスト似ているが、ステフのほうがやはり本職なのでアクションのメリハリが利いていて面白い。ステフが片思いしているプロ保釈逃亡者探しのレンジャーとクーパーが同じだし、やはりステフの片腕になってくれる極めつけキャラのルーラと本作学生食堂レジ係の女性とが同じとか…キャスティングもとてもそっくり。
 引用は、同居させてもらっていて片思いをしている本職探偵クーパーに車を出してもらって郊外へ行くシーン。学長夫妻のひと粒だねの青年の深緑色のベンツ、ヘザーを追いまわす元カレの"シルバーのBMWコンバーチブル"、絶世スタイルの寮母レイチェルのVWジェッタが登場。ニューヨークのワシントン・スクエアあたりが舞台となるので余ほどの金持ちじゃないとマイカーはもっていない。(2011.8.6 #698)

でぶじゃないの、骨太なだけBMW2002Big Boned (c)2007中村有希訳 創元 2011

『「わっかんないなー」ハッチンソン川パークロードをいく車の中でわたしは言った。
「なにが?」クーパーが訊いてくる。
 まわりの車はおっかないくらいのスピードで私たちを追い抜きながら、下品な罵詈雑言をいいたそうな顔で―そしてもっと下品なジェスチャーをしてみせる。
 けれどもクーパーはまったく気にならないようだ。いま、彼は74年型BMW2002を、まるで赤ちゃんをあやしているように、ものすごく慎重に運転していて―むしろ、ありがたいことだった。だってこの骨董品の4ドアの車ってば、時速90キロで走ると、ちょっとした溝にタイヤをとられるだけで、ばらばらになりそうなんだもの。
 車を最近大掃除しておいてラッキーだった。わたしの足は珍しく、ファストフードを食べた後のゴミが十センチもたまった地層の上ではなく、フロアマットの上にのっている。』
--COMMENT--
 へザー・ウェルズ・シリーズ3作目は、出勤してみると、副寮母へザーの新しいボスが自室で殺されていて大騒ぎに。逮捕された学生職員の組合活動をする院生を救おうとするなかで、意外な犯人に殺されそうになる。多彩な楽しい登場人物、ひっきりなしに笑える会話!! コージーミステリーとしてはとにかく面白い作品。亡くなった寮夫のお別れの会で、学長がスマホで"ファンタジーフットボール"なるゲームに夢中になっている…など滑稽場面がたっぷり。
 引用はクラシックカー好きの家主クーパーになんとか彼の愛車を出させて事件の背景を知っているらしい女子学生の家を訪ねるシーン。他には残された家具を運ぶ"ライダーレンタカーのトラック"が登場、Ryder Truck Rental and Leasing は大手企業らしい。(2012.3.24 #728)


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