CAMPBELL, ROBERT /ロバート・キャンベル
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L.A.で蝶が死ぬとき | プリマス、BMW635CSi | IN LA-LA LAND,WE TRUST (c)1986 | 二見書房、1987 |
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『チッピー・バードは、ビニール・トップのついた口紅のように真っ赤な色のフォードアの1976年プリマスのなかで、右手に持った十ドル紙幣の札束を見せながら、左手でレイシー・オハイオのドレスの裾をまくりあげようとした.
チャッピーはフレッド・アステアに似ていると自認し、髪を30年代風にべったりと後ろに撫でつけていた.レイシーのほうは、見方によっては若い頃のベティ・デイヴィスに似ていると信じていた.チャッピーはちんぴらペテン師だった.レイシーはプロになることを考えているアマチュアの娼婦だった.
彼らは、ポントチャートレイン湖の岸から湖面に向かって延びている遊覧船用の棧橋の前の駐車場に繁ったマグノリアの木陰に車を止めた.誰でも知っているように、この湖はニュー・オルリンズの名所である.だがチャッピーはレイシーに、おまえが両足を広げさえすればここは今すぐ天国に変わる、と甘ったるい声でささやきかけた.
いたるところに傷の付いた旧型のステーション・ワゴンがのろのろと通りを走ってきた.映画館の横の十字路の向こうから、銀色の BMW635CSiがヘッドライトを光らせて猛スピードで突進してきた.ホイスラーは、目の前で最悪の事態がおきるのを飽きるほど見た人間に特有の物憂げな落ちつきはらった表情でそれを見つめていた.通りを走る車はその二台だけで、このふたつの車が衝突する可能性は大きかった.LAの雨の夜では珍しいことではない.』
--COMMENT--
米国の現代暗部を象徴する犯罪をオーソドックスなハードボイルドタッチで描くキャンベルの邦訳第2作目.
ニュー・オルリンズでのプリマスでストーリーが始まり、LAでのBMWと、この2都市を結ぶ事件の要所要所にクルマたちが登場してくる.
(93/03)
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