CARRE, JHON Le ／ジョン・ル・カレ

ドイツの小さな町１９５０年代英国車 A SMALL TOWN IN GERMANY, (c)1968 早川書房、1990: 『・・・・二人はそれから、駐車場の車の数をかぞえだした。
「全部並んでいますね。欠けているのは一台もない」コークが断定したが、その通りだった。
ブラッドフィールドの白塗のジャガー、ド・リールの赤いスポーツカー、ジェニー・バジターの小型車ウルズリー。
　そしてゲイヴィストンの大型ライトバンには、後部座席の上に、小児用の椅子が重ねておいてある。ジャクソンのは丈夫一式の２０００ｃｃ．そしてクラブの中古車カピテーンまでが、緊迫したこの危機の時間にまちがいなく、汚れた泥除けをかぎづめのように突き出して止めてあった。
「ローヴァーという車は、いつ見てもいい形ですね。」コークがいった。
　二人は賞賛に気持ちを沈黙の内に示して、流れるような輪郭に見とれていた。』
-- COMMENT --
大戦後の混乱期に、東西ドイツ問題で揺れ動くボン英国大使館を舞台に、失綜した現地採用職員の秘密を調査する公安部員ターナーが主人公。
　このシーンはその英国大使館の窓から見た職員の車をえがいたもの。ル・カレは、どの小説でもイギリスのごく普通の車をそれとなく登場させるのがうまくいつも感心させられる。
　ソビエトのスパイとして疑られているこの現地採用職員の意外な、かつ人間味溢れる秘密がル・カレ独特の持ち味として伝わって来る。 (91/03)

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