ユダヤ警官同盟 | シヴォレー・シェヴェル | The Yiddish Pokicemen's Union (C)2007 | 黒原敏行訳 新潮 2009 |
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米国生まれのユダヤ移民3世の著者の歴史改変ミステリ作品…あとがきを読んで初めて知りました。物語の場所がユダヤ難民を受け入れたアラスカの地の果ての特別区ということで、読んでいる間は、へーそんな地区があったのか??なんてそのまま間に受けちゃったほど。殺人課刑事ランツマンが、ある殺人事件現場に残されたチェス盤に興味をおぼえ犯人を追う。そんなユニークな地域設定、登場人物、ユダヤ人問題、加えてたっぷりとアクションも楽しめる。
上記のランツマンのシェヴェルは随所に登場。いかがわしい薬物中毒者更正施設の三輪電動カート("ズムズム"という商品名だが作者の創作かも)、フォード・カウディーリョ、1961年型ロイヤルエンフィールド・クルセイダー、GMC大型ピックアップ・トラック、またビュイック・ロードマスターなど。
なお舞台となるシトカは実在の都市で、アラスカ州最南東端のアレキサンダー諸島バラノフ島西岸に位置する市及び郡。2005年の推定人口は8,986人で、元アラスカの州都。Ref.ウィキペディア (2009.9.17 #606)
ワンダー・ボーイズ | フォード・ギャラクシー | WONDER BOYS (C)1995 | 菊地よしみ訳 早川 1997 |
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長編2作目の作品は、ピッツバーグのカレッジ文学教授グラディ・トリップが完成から程遠い同名長編小説を抱えながら妻に出て行かれるなか、友人で編集者のクラブツリーと創作クラスの教え子とで滑稽無分別なドタバタを演ずる。この手のコンテンポラリー作品はなかなか楽しむというところまで行けないなぁ。
引用は、編集者がピッツバーグに着いて出迎えるシーン。このギャラクシー(後のほうでは、エメラルド・グリーンと書かれている)がどういう訳か、最後までちょくちょく登場することになる。学生時代の教師のジャガーEタイプ、不倫関係にある女性学長の赤褐色のシトロエンDS23コンヴァーティブル、著作中の人物の55年型ランブラー・アメリカン、妻の古いビートルなど登場車も支離滅裂といった感。(2009.10.2 #609)
シャーロック・ホームズ最後の解決 | 1927年型インペリア | THE FINAL SOLUTION (C)2004 | 黒原敏行訳 新潮 2010 |
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ジャンル横断小説に気を吐くシェイボンのホームズ物のパスティーシュ作品。難民となった少年のまわりでおきた殺人と少年のオウム(何故か数列をしゃべる…)の失踪事件を、老養蜂家が追う。この老人が探偵ホームズのその後の姿であるが、もちろん作品中には一切ホームズとは出てこず、<正統にして典雅、オマージュに満ちた企み>と評されるゆえんだ。本文150ページほどと、一気読みにぴったり。
引用は、老人が司祭にたのんでロンドンへ向かうシーン。二次世界大戦の爆撃で変わり果てたロンドン市街の様子が生々しい。他に司祭館の下宿人の"1933年型MGミジェット"などが登場する。(2010.7.7 #640)