lagoon symbol
Child, Lee /リー・チャイルド

警鐘ポルシェTripwire (C)1999小林宏明訳 講談社 2006

『彼女の年式の古いポルシェが隠してあるガレージへ、リーチャーはクリスタルとともに歩いていった。彼がシャッターを上げると、彼女は車に滑り込み、エンジンをかけた。オイルが充分にあたたまるまで、リーチャーが泊まっているモーテルへゆっくり車を走らせた。極太のタイヤがひびだらけの舗装路で弾んだが、穴ぼこもものともしなかった。クリスタルはネオンがついているモーテルのロビーの前で車をとめた。チョークは閉じたままなのに、エンジンは高回転していた。
 リーチャーは自室から戻ってきて言った。「いこう、もって行きたいものは何もない」
ダッシュボードのライトに顔を照らされたクリスタルは、うなずいた。
「オーケー、シートベルトを締めて」
 彼女はギアをローに放り込み、街中へと走らせた。ノース・ローズヴェルト・ドライブをゆっくり走ってから、左折して幹線道路に入ると、レーダー探知機のスイッチをいれる。彼女がアクセルペダルを床まで目一杯踏み込むと、車の後部がぐんと沈んだ。戦闘機にのってキー・ウェストを去るかのように、リーチャーは革張りの座席に押し付けられた。
 キー・ラーゴへ向かって北へ走っているあいだ、クリスタルはずっとポルシェを3桁のスピードでドライブした。シフトアップとシフトダウンを繰り返し、エンジンを高回転に維持しカタパルトで飛び出すような勢いでコーナリングしたが、ダッシュボードの赤い光に照らされた彼女の顔には笑みが浮かんでいた。高速で飛ばすにはテクニックがいるリア・エンジン車うを見事に操っていた。距離がのびるにつれ、軽飛行機のような速さで路面を疾走した。』

-- COMMENT --
 英国人の作家リー・チャイルドのものは初めて読む。この孤高の元憲兵隊軍人ジャック・リーチャー・シリーズはこれまで9作品が刊行されていて、本書は3作目。主人公があまりにステレオタイプなタフガイだし、冗長なストーリー展開(上下巻で800ページ!!)はかなりの忍耐力を要するが、冒頭が最近読むことが多いフロリダのキー・ラーゴだったのでついつい読了。
 引用シーンは、リーチャーを訪ねてきた探偵が殺され、その謎をとくためにニューヨークへ脱出するところ。クリスタルは、ヌード・バーのダンサーという設定で、ポルシェをがんがん飛ばしただけでその後の登場はない。いまいちストーリーのつなぎもよくわからない。
 ほかには、闇金融業者の"シヴォレー・タホとGMCユーコン"、女性弁護士の"ダークグリーンの四輪駆動オールズ・ブラヴァーダ"、悪徳探偵の"メタリックブラックの四輪駆動リンカーン・ナヴィゲーター"など。(2006.7.31 #425)


作家著作リストC Lagoon top copyright inserted by FC2 system