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CLARK, MARY HIGGINS /メアリ・H・クラーク

消えたニック・スペンサーいろいろThe Second Time Around (C)2003宇佐川晶子訳、新潮 2005

『なにがリンをベッドフォードへ行く気にさせたのだろう? そう思いながら、私はマンハッタンの東側からウェストチェスターへ向かう一番の早道として、思い切ってクロス・ブロンクス高速道路を使おうと考えた。事故や渋滞がなければよいのだが、たいていは事故が発生して、クロス・ブロンクスはアメリカで最悪の道路と呼ばれている。<中略>
 四月らしい陽気が戻ってきていた。車をとめているガレージまでの3ブロックを歩きながら、空気のにおいをかぎ、生きていることに感謝した。太陽が傾き、空は真っ青に晴れていた。頭上にうかぶ数片の雲は、さりげなく空に置かれた白いふかふかのクッションのようだった。インテリア・デザイナーのイヴは、部屋のアクセントとしてクッションを使うけど、まさにあの感じだ。すべてがきちんと所定の位置にあるとき、クッションはさりげなさを演出するなくてはならないアイテムなのだ。
 ダッシュボードの温度計は16℃を表示していた。今のような理由でなければ、郊外までのドライヴにはもってこいの一日になりそうだ。』

-- COMMENT --
1929年生まれのベストセラー女流作家(それもアイルランド系アメリカ人)なので、乱作気味の大味なミステリーかと思ったが、けっこうスピーディなストーリー展開とか、次々とでてくる山場づくりには大したもの。ただ、主役のマーシャ・デカーロ(上記引用の"私")は、経済コラムニストなのに、えらく大活躍(の出来すぎ)で、ニューヨーク市警の刑事なんかさしおいて、難問をどんどん解きあかし、事件を解決に導いてしまうのにはムリがありそう。
 製薬会社の若い社長の"黒のBMW"、その奥方の"赤いフィアット"、下宿屋のおばさんの"トヨタ"などが登場してくる。見落としたかも知れないのだが、主人公が使っている車は"ダークグリーンのクルマ"としかでてこず車名はわからなかった。(2005.7.17)


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