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COHEN, STEPHEN P./スティーブン・P・コーエン

アイランド・オブ・スティールトヨタISLAND OF STEEL, (c)1988早川,1990

『パトロール・カーが回転灯をつけると、すぐに車を停めた。今度肋骨を折ったら電車を使おうと思いながら、ゆっくりと車を降りた。車の脇に立ち、通り過ぎるプリマスを眺めていた。・・・・
「そうか、あいつはどうしようもない野郎なんだよ、エディ。ところで、この車は?」覗き込むようにして車を見ながら言った。
「外車だろ?」
トヨタだ」
「レンタカーだな?」
「俺がこんな車を買うと思うか?」彼は笑った。
「そうだな、エディ。たしかあれは、そう、エル・カミーノだったろう? 67年型だった」
「よく覚えているな、ボビィ。おまえはサンダーバードだった。73年型の新車だったよな?」
「4年だ。そう、74年型のサンダーバードだ。それで、最近はどこに住んでいるんだ?親父さんがホームステッドから引っ越したと聞いたが」
「ああ、キーズへな」「どの?」「ビッグ・パイン・キーズだ」』

--COMMENT--
 処女作『ハートレス』につづく若手作家コーエンの第2作にあたり、非情の街マンハッタンの不動産不正融資にからむ弁護士事務所を中心にサスペンスが進行する。
 その事件を担当する探偵事務所の見習いともいうべきエディが失踪者を追っていくフォート・ローダーディルでレンタルする車がトヨタであり、上記のように昔なじみのパトカーの警官との会話になる。昔乗っていたこだわりのエル・カミーノとくらべると、レンタカーでごく普通の車であるトヨタをなぜ選ばせたか不思議ではあるが、以前の将来の夢溢れる頃と、今のしがない私立探偵の姿の対比なんでしょか? それにしても、カローラなのかクレシーダあたりなのかもわかりませんネ。(91/12)

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