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COLLINS, MICHAEL /マイクル・コリンズ

鮮血色の夢トヨタ、ランド・ローバーTHE BLOOD-RED DREAM, (c)1976創元,1992

『わたしが言った.「フレディーの酒場というのはどこですか?」
「簡単には見つからないぞ」ヴィタウテスが言った.
アンナが言った。「わたしが案内してもいい、パパ?一番手っ取り早いわ」
「いいだろう、アンナ。だが、すぐに戻るんだぞ」
 アンナは自分のベッドルームに犬を入れ、トヨタのほうに急いだ。
わたしは助手席に乗った。ケラーはランド・ローヴァーでついてきた。表はもう暗く、ヘッドライトが当たると、低い松の茂みと不気味な畑の間で狭い郡道はカーブしていた。
 アンナはゆっくりと運転した。ランド・ローヴァーとケラーはわたしの背中にのしかかりそうなほどすぐ後方を走っていた。
 「父はあの男の子たちがきらいなのよ」アンナがいきなり言った。
「あれじゃロシア人やドイツ人みたいだわ。自由戦士だったことは一度もないくせに。本当は自由が好きじゃないのね。自分の持っている物を維持するために、ただ自分の物をドイツ人やロシア人に取られたくないから戦かったのよ」』

--COMMENT--
ユーゴスラビア亡命者たちのグループの間で起きた事件を片腕の探偵フォーチューンが追う社会派のハードボイルド。
 ニューヨークの東欧亡命者家族の使っているクルマがトヨタであり、背景からと、著作が1976年であることを考えるとたぶんカローラかな? (92/07)

フリークポルシェFREAK, (c)1983創元推理,1990

『彼女は腕時計を見た.「出かけなきゃ.ニューヨークから来たんでしょう.一緒に車で帰りましょう.途中で話せるわ」
 その日最良の申し出だった.彼女にあえば、今のところチャタムにもう用はない.ニュージャージーの北行きハイウェイでもラカワナ鉄道よりはましだが、混雑したハイウェイでポルシェを運転する人間を私はあまり信用しない.気違い沙汰に近い.少なくとも、自分以外の人間を無視する高慢さが気に入らない.
 「わかってるわ」彼女が言った.「私だってハイウェイでポルシェになんか乗りたくないわよ.ガソリンを喰うし、修理にだしてばかりいるけど、安かったものだから」
 彼女は私の表情から心を読みとったのだ.まわりの出来事をほとんど見逃さず、そのことを考慮する女だ.イアン・キャンベルの魅力と高慢さに魅了されるようなタイプではなさそうに思えた.彼女やキャンベルが話す以上か、二人のうちどちらか一方がきずいている以上の関係なのだろうか.だが、有史以来、高慢さ強い魅力だとみなす女もいるのだ. わたしはおんぼろの古いステイタス・シンボルの助手席になんとか体を押し込んだ.彼女のポルシェはチャタムを出てショート・ヒルズに向かった.運転はなめらかで巧みだった.42号線のずっと東まで進み、スプリングフィールドで78号線にはいる頃には、私はずっとリラックスしていた.』

--COMMENT--
ニューヨークの片腕探偵ダン・フォーチューンもの第11作であり、若い息子夫婦の失踪を父親から調査依頼されるところなどロバート・B・パーカーやレイモンド・チャンドラーの作品の印象に近い.
 「彼女」は一人暮らしで、絵画、コラージュ、彫刻を手がけるアーチストであり、ポルシェを乗りこなすところなど性格がよく描かれている.(92/08)


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