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J.J.コノリー

レイヤー・ケーキローバーLAYER CAKE (C)2000佐藤耕士訳 角川 2006

『迎えの車に乗り込むと、モーティは「オーケー」とだけ呟いた。新聞から顔をあげもしない。車はクラーキーことミスター・クラークが、偽の免許証と偽のクレジットカードを使ってレンタルした真新しい最上級のローバーだった。緊急時には車を置いて逃げ出せばいい。
 クラーキーの運転は有難かった。クラーキーは体の一部のように車を操ることができる。乗り心地は静で、モーティの滅茶苦茶でせわしない運転とは大違いだ。モーティは信号と信号のあいだを、パトカーに追いかけられているわけでもないのに、100キロ近い猛スピードでぶっ飛ばす。
 クラーキーはスピードに緩急をつけて、タイミングよく黄色信号にひっかるように走り、ちょうと信号が黄色になったとき、いきなり右か左に曲がった。違法じゃないが、尾行している車があれば同じことをしなければならず、こっちが尾行に気づくというわけだ。クラーキーは車を走らせているあいだ、後ろの車が赤信号で突っ込んできていないか確かめるために、リアミラーで後方をみている。そうやってミラーを注視しながら、同じ界隈を三、四回まわった。それから車はリージェント公園に入り、インナーサークルを走った。園内は新緑がまぶしく、桜も咲いていて、世界がふたたび息を吹き返しているのがわかる。』

--COMMENT--
ロンドンを舞台にした珍しいブリティッシュ・クライムノヴェル…ということで手にしたもの。麻薬ディーラーの内幕とかよくわかるけど、連中の会話(まぁユーモアはたっぷり)ばっかりでいっこうにアクションもなく、どうもどこが面白いのか?ではあった。  裏世界のドンのジャガーとBMW、他組織の大物のサーブ・カブリオレとランド・ローヴァー、ヤク売人グループの"白と金色のメルセデスGワゴンジープと同じくメルセデスのスポーツ・コンバーチブル"などが出てくる。まさに売人っぽい車だが、Gクラスは「ゲレンデヴァーゲン」を示すとおりどんな悪路でも走りきれる車といこと。中近東向けならいざしらず、白とゴールドとのツートンなんてあり得るのかしら?? (2006.8.23 #430)


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