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CORNWELL, BERNARD /バーナード・コーンウェル

ロセンデール家の嵐 フォード・エスコート
日本製の四輪駆動車
SEA LORD , (c)1989早川,1991

『「風力6、突風で7ってとこでした」と、わたしは罪を悔いて言い、それからバッグをガレージまで運んだ。彼女が使い古したフォード・エスコートのドアを開いた。「君の車?」と、わたしは聞いた。
驚きの口調が彼女にも聞きとれたようだ。「どんなのを期待していたの? ランボルギーニ?」 「すくなくともポルシェかと」
「がっかりさせて悪かったわね」彼女がルーフの上でキーをぶらぶらさせた。「運転したい?」
「いいや」
「よかった。わたし運転好きなの」
彼女が車を全速で走らせた。人気のない暗い通りをいくつも抜けた。
 彼女はチャーリーみたいに運転した。速く、充分にうまく、警官が自分を無視するだろうとの軽率な確信に満ちて。彼らはそのとおりにした。』 ・・・・・・・・
「いいかい」と、わたしは言った。「人生なんて、とてもつまらなくも、気むずかしくも、最悪の場にもなれるんだ。だから身の処し方はただひとつ、けっして屈服しないことさ。不運は誰にだって襲いかかるから、問題はそこでどうすべきかだ。それと戦い、爪で引っかき、蹴り倒すしかなく、断じて、断じて屈服しちゃならない。涙の谷間を通り抜けてはじめて、神様がすてきな航海を約束してくれるのさ。だから、かりに僕が軽薄にしても、それはひたすら、不幸を軽んじるほうが涙にくれるよりましだからだよ』

--COMMENT--
ロセンデール家の最後の財産であったゴッホの絵画を巡って、ヨット生活を送っている主人公と、ヨットを舞台とする事件、そしてロマンスと存分に楽しめる冒険サスペンス。
 上の引用の後段は、主人公が好きな彼女に言って聞かせる一節で、おまけでのせました。(92/06)

嵐の絆日本車STORMCHILD, (c)1991早川,1993

『彼女は翌朝十時に、日本製のちっぽけな輸入車で現れた。バンパーステッカーをやたらと貼ってあり、塗装のはげかかったトランクにまでおよんでいた。一枚はヴェジタリアンはレタスのベッドで営む宣言し、わたしは身体傷害者のためにブレーキを踏みますと警告しているものもあった。 「きみの車かい?」と、わたしはジャッキーに聞いた。
「もちろん。計算してみると、飛行機より車で旅した方が安そうだから。なるべく低料金のモーテルに泊まれば」ジャッキーの説明によると、カラマズーの編集長がジェネシスに関心を示さなかったので、彼女は休暇を取り、自分とモリー・テッターマンの負担で会議に出席したらしい。
 われわれは互いに意見を出し合ったにもかかわらず、町をでるのに四度も道をまちがえたが、ようやくジャッキーが車を洋上ハイウェイに乗せた。ところが、彼女はきわめて用心深く、時速45マイルまでしかスピードを上げなかった。
「きみはほんとに、これでカラマズーまで走るつもりかい」わたしは驚いて聞いた。
 彼女は明らかにそれを、臆病な運転よりも車に対する批判と受け取った。「これはスピードを出しすぎると、ゆれがひどくて」そして、車のいろんな症状を並べはじめた。彼女がしゃべ っている間、私は密かに観察した。彼女のどこに自分がひかれるのか、我ながら疑問だったのだ。』

--COMMENT--
 コーンウェル期待の第四作目。わたしの好みの海洋冒険ものが最近とみに少ないなかでコーンウェルだけが年一作づつ着実に刊行している。
ストーリーは荒削りであるが、南アメリカのパタゴニア諸島、定番のホーン岬などヨットでの追跡劇を存分に楽しませてくれる。上の引用は主人公がキーウェストで開かれた会議で一緒になった環境保護派の女性記者ジャッキーの車に同乗するシーン。車種はわからないが、純粋無垢で個性的な性格がよく描かれている。(94/03)


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