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David, Evelyn / イヴリン・デイヴィッド

探偵は犬を連れて黄色いバンMurder Off the Books (C)2007木村博江訳 創元 2009

『「そろそろ、大学へ回ってみようかね」またしても入れ替わった乗り物へと歩きながら、マックはウィスキーに話しかけた。私立探偵とウルフハウンドは、黄色いバンによじ登った。車の横腹には、大きな黒いゴキブリの絵がついている。巨大ゴキブリは足を広げて仰向けにひっくりかえっており、その横には「嫌われ者」と書かれた墓が立っている。ジェフ・オハリヒーは最近、ゴキブリ駆除で王朝を築いた、マラキ・フリン翁を埋葬した。92歳の偉大なる老人は、磨き上げたオーク材にクリームサテンの内張りが施された棺桶で、あの世へと送り出された。一族の標語"永遠に死を"が絵のしたに描かれたバンは、その棺桶代がわりだった。
 老人の孫、コリーン・フリン・マコートは、古いバンを祖父の野辺送りの費用にあてることをむしろ喜んだ。ところが、コリーンの弟のフランク・フリンは、そうは思わなかった。ジェフの話によると、フランクは自分が老人の商売を継ぐので、バンを返せと言っているらしい。
「フランキーは、殺虫剤より毒気が強い」ジェフはマックに車のキーを渡しながらぼやいた。』
--COMMENT--
 Marian Edelman BordenとRhonda Dossettとが合作したユーモア・ミステリ。ワシントン市警の刑事だった私立探偵マックと愛犬アイリッシュ・ウルフハウンドの"ウィスキー"が大学経理部でおきた横領と殺人事件を追う。変った登場人物とユーモアたぷりの会話は楽しめるが、全篇でやたら無駄なプロットやドタバタが多すぎて、まとまりに欠けること、また主人公のキャラクターがイメージしにくく中途半端。
 なんせ当探偵は自分の車をもっておらず(何故かの説明もない)、親友で多角経営をしている社長の葬儀社の車を次々に借りる。引用の"ゴキブリ・カー"は、"アイスクリーム・カー"、"霊柩車"に続いて借りた車で、そのあとはタクシー車両、葬儀屋の息子の"1996年型ニッサン"…と続く。
 ほかに、容疑者になった弟をなんとか救おうとする姉の"息子がブルー・ドッグと名づけたオンボロ1955年型ダッジ・キャラバン"、弟が購入しようとする"ジープ・チェロキー"、葬儀屋の奥方のセブリング等々。
 P.S. 横領の記録が入ったファイルがキーになるが、なんと"ディスク"と描かれて何度も出てくる。フロッピーディスクらしいが当代は絶滅に近いメディアですね。本書カバーの原題が"Murder Off the Book"となっていてBookにsぬけ。細かな点ですが気になるなぁ。(2009.6.9 #597)


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