lagoon symbol
DAVIDSON, LIONEL /ライオネル・デヴィッドスン

極北が呼ぶ ボービク KOLYMSKY HEIGHT , (c) 1994 文春文庫 、 1996

『一階に降りると、彼は休憩室にの人波をかきわけ、ドアの前でそばにいた男」に声をかけた。「ボービグはどこにあるんだ?」
「この建物のちょうど裏側だ」
 彼のサインした帳簿の番号は、車のキーの番号と同じだった。彼は建物の裏側にまわり、大きな車置き場にある車を見つけた。4、5台のピックアップトラックと多数のジープがならんでいた。そこには、だれもいなかった。彼はそのなかを歩き回り、ナンバー・プレートを調べ、自分のボービグを見つけた。ジープのひとつで、頑丈なつくりの戦車のように角張った不格好な車だった。タイヤは半分空気が抜けているようだった。彼は車の周囲をまわり、タイヤを蹴り、置き場のなかの全部の車のタイヤが半分抜けていることに気づいた。
 彼は車に乗り込み、イグニッションを見つけ、キーをまわした。すぐに、エンジンがかかり、太く低いせきこむような音があがった。アクセルを踏み込むとすぐにエンジンの回転はあがり、安定感のある甲高い音が響きわたった。ボービグ<子犬>という呼び名はここからきたのだろう。彼はこの車の癖をつかみ、走りだした。』

--COMMENT--
シベリア極地を舞台にした本格的冒険アクションものを久しぶりに楽しんだ。
 上記は、極北のある研究所に潜入するためトラックドライバーとして働き始めるシーンだが、後で逃亡用のボービグを独りで部品から組立てしまう・・ちょっとやりすぎなんじゃないかしらね?
 ほかに「カマ50」など大型トレーラーを凍ったルートでドライブしたり、東京、横浜や小樽など日本の都市も登場するなどエンターテイメント性たっぷり。
「このミス 97年版」海外ミステリーでは30位にランクされたが、昨今冒険小説の新作が少ないので貴重なものとも言える。(97/01)


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