lagoon symbol
DIEHL, WILLIAM /ウイリアム・ディール

フーリガンサンダーバードほかFOOLIGANS, (c)1984角川、1987

『まるで土曜の午後のカントリー・フェアだった。それを取り仕切っているのがスティックだ。
黒いサンダーバードの屋根に青いランプを取り付けると、スティックは車をだした。片手でハンドルを握り、もう一方の手でタバコに火をつけ、警察無線のダイヤルを合わせ、さらにタバコを口にくわえたままおしゃべりをしながら、その手でサイレンのスイッチを入れた。タイヤをきしませて疾走するポンティアックの前で、歩行者や他の車はあわてて道をあけた。私はシートに沈み込み、腕をのばして体を支えた。
「怖いか?」スティックが言った。
「いや、ちっとも」私は嘘をついた。
 車はアゼリア通りに斜めにはいり、時速70マイルで方向転換した。
スティックの物にこだわらない態度は気に入ったが、この運転ぶりは危なかしくて仕方なかった。刑事としては優秀な男なのだろう。そうでなければFRS【連邦組織犯罪捜査班】の捜査官が勤まるはずはない。』
『スティックは先にたって外にでた。彼の乗ってきたブラック・マリアは、まるで喧嘩を売るように駐車禁止区域に止まっていた。
「俺は自分の車に乗っていくよ」私は言った。「後で別行動するときに便利だ」「心配するな」スティックは、私が乗り込む側のドアを開けてくれた。
「飛ばすときでも90以上は出すなよ」私は言って、乗り込んだ。
「90以上出さないと、エンジンがガタガタいうんだよ」彼は答えた。
「結構じゃないか。ガタガタいわせておいてくれ」』

--COMMENT--
マフィアが潜伏する南部の町に派遣された特捜班のキルマーが地元警察に協力して組織解体に追い込むハメットばりのハードボイルド。早いテンポとしゃれた会話が楽しく、最近ディールの作品をつづけて読んでいます。上の引用は、同僚の荒っぽい運転の車に乗せられ辟易とするシーン。他に赤いフェアレディZなどが登場する。(94/03)

タイ・ホーストヨタ他TAHI HORSE, (c)1987角川、1990

『オリエンタルホテルの外に出ると、ハッチャーは玄関の前に止まっているタクシーやハイヤーをチェックした。
車はいつも1週間単位で借り切ることにしている。そうすれば、いつでも使えるし、値段も割安になる。運転手も車を選ぶ際の重要なポイントだ。街の裏のことまで知っている気のきいた者を見つければ、何かと役に立つ。
 メルセデス・ベンツやロールスロイスのリムジンが先ず並んでいる。そしてその後にプリムスやトヨタの普通車がつづく。
運転手達はみな例外なく、顔に微笑みを浮かべ、ドアを開き、手を動かしてハッチャーを招き込もうとする。』

--COMMENT--
タイトルの通り、タイのバンコックの街角での風景。ここ出でくるトヨタの車は、コロナあたりのような気がしますね。
 ディールの作品は初めて手にしますが、なかなか読みごたえのある正統派の冒険ものなんです。とことん戦いつくす主人公ハッチャーといい女、謀略と対決、愛と悲しみなど全てを揃えたサスペンスの定番で、安心して読めます。(91/09)


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