幻の特装本 | ナッシュ | The Bookman's Wake (c)1995 | 宮脇孝雄訳 早川書房 1997 |
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前作『死の蔵書』の続編で、元警官だったデンバーの古書店主クリフが、この世には存在しないとされた特装本にまつわる事件に巻き込まれていく。古書コレクター、版元、著者などのマニアックな世界が語られるので、本好きにはたまらなく面白い。「このミス 98」で10位にランクインしたのもうなずける。登場する車も、かなり古いものだった。(1998/07/12)
名もなき墓標 | プリマスのワゴン | DEADLINE (c)1981 | 三川基好訳 早川書房 1999 |
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『死の蔵書』『幻の特装本』よりも以前に書かれたものだが、小さな事件からつぎつぎに拡がる謎を追うストリーテラーとしてのダニングの面白さに引き込まれました。トリビューン紙記者ウォーカーとアーミッシュの娘が元過激派運動家の女性セイヤーズに捕らわれ、FBIに追撃されるシーンなど、まさに手に汗の迫真! 私が好きな、楽しい会話、地元への愛着、主人公のこだわり、の条件を満たすミステリーではないが、純粋に着想・ストーリーで読ませる部類だ。上記は、ニュージャージーからシカゴへ、車を乗り換えながら逃避行するシーン。セイヤーズがもっていた車は、"1950年代の緑の古いフォード"としてでてきていた。それにしても、ジャック・ヒギンスばりの邦訳タイトル「名もなき墓標」って、あまりぴんとこないなぁ。(2000.1.23)
災いの古書 | GMCトラック | The Sign of The Book (C)2005 | 横山啓明訳 早川書房 2007 |
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古書店主クリフ・シリーズ第四作は、恋人の弁護士エリンに頼まれてコロラド・ロッキー山中の町で起きた稀覯本コレクターの謀殺事件を調査する。怪しげな本を扱う3人組を追って出かけたバーバンクの古書フェアの雰囲気などが詳しく書かれていて楽しい。主人公が好きな本にまつわる事件とはいえ、自分の店を長期間任せっぱなしでもよい元警官って、ずいぶんと都合の良すぎるプロフィールではある。
上記引用のGMCは不審な古書業者のトラック。クリフ自身の車については、本書では車名は出てこなかったようだ。舞台となったコロラドの小さな村パラダイスへは、デンバーから西南のフェアプレイ〜ポンチャ・スプリング〜ガニソン(以上は実在地名)を経由してさらに南下した処となっているが、GoogleMapを調べても見つけられないので架空らしい。ロバート・B・パーカーの「パラダイス警察署長ジェッシー・シリーズ」の"パラダイス"はマサチューセッツの設定だし、スティーブ・ハミルトン『ウルフ・ムーンの夜』と『氷の闇を越えて』ではミシガン北岸の片田舎"パラダイス"が登場する。ミステリ作家ご愛用の地名ではある。(2007.10.8 #515)
失われし書庫 | ポンティアック | The Bookman's Promise (C)2004 | 宮脇孝雄訳 早川 2004 |
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古書店主クリフ・シリーズ第三作は、イギリスの探検家リチャード・バートンがアメリカ南部を訪ねたときの幻の手記を巡っておきた事件を追う。史実を元にした歴史フィクションとしてはよく出来ているものの、登場人物が平板というか面白みがなく読み進めるに忍耐が必要だったね。
そんなことから引用も短めm(__)m 他には、クリフのところに尋ねてくる老婦人が乗る"60年代中期の名車フォード・フェアレーン"が他に登場するぐらい。(2007.10.25 #517)
深夜特別放送 | エセックス | Two O'clock Eastern Wartime (C)2001 | 三川基好訳 早川 2001 |
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第二次大戦のさなか、怪我で徴兵を免れたデュラニーがアメリカ各地を放浪しながら作家を目指しラジオのシナリオライターとして名を挙げていく。その間に、心の恋人ホリーの身辺の事件にまきこまれていく。放浪中にケンカがもとで逮捕・収監されてしう下りはジョー・ゴアス『路上の事件』を思わせる。
訳者三川基好さん(2007年ご逝去)のファンながら、なんとも話の向きがつかめず残念ながら途中でギブアップm(__)m (2007.11.25 #522)
愛書家の死 | スポーツカー | The BOOKWOMAN'S LAST FLING (C)2006 | 横山啓明訳 早川 2010 |
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古書店主クリフ・シリーズ第五作は、20年前に亡くなった馬主の妻の蔵書から盗まれた稀覯本の調査を頼まれ、競馬場で働きながら、その不審な死を追う。元警官で今は古書の鑑定家、はたまた競馬好きで馬丁の仕事もばっちり…とちょいと出来すぎの主人公のわりに、ピント外れの捜査ばかりで最後にポロリとかなり無理のある犯人が登場と粗いストーリー。前半は稀覯本ミステリ、後半はD.フランシスばりの競馬ミステリと、両方楽しめますが…。意味がつながらがらない訳出箇所が多いのも気になるところ。
引用は結末近くの部分。レンタカーに<図書用ナンバー>をなぜ掲示するんでしょうかね? 牧場主の息子キャメロンのビュイック8(スティーヴン・キングの『回想のビュイック8』2002を思い出しますね。Google画像検索)、クリフが乗るレンタカーのシボレーなどがでてくる。(2011.1.4 #670)