lagoon symbol
TOM EGELAND /トム・エーゲラン

狼の夜〜TV局ハイジャックプジョーULVENATTEN (C)2005アンデルセン由美訳 扶桑 2008

『交渉人トマス・フィエルはさびついたおんぼろのプジョーを救急車から少し離れた場所に駐車した。少し伸びすぎた黒髪に指を走らせながらフィエルはあたりを見渡した。テレビ局前は緊急車や武装した警察官が入り混じり、まさに戦場のようだった。昨日から髭をそっていないフィエルの顔にはごま塩模様のの無精ひげが生えかけていた。
 彼は救急車の脇に立っているシフト隊長のほうにうなずいてみせた。隊長は救急隊隊長との文字が記された発光式ベストを着ていた。芝生では救急班が応急医療センターを設置している最中で、手術台や人命救助に必要な設備を運び込んでいた。メルセデス・ベンツの救急車8台と医師の乗り込んだ大型救急車1台が後部ドアを開けっ放しのまま駐車していた。』

--COMMENT--
 ノルウェーで生まれで、記者・編集者、TV局報道部門を経て、作家に転身したエーゲランの初邦訳書。人気のTV生討論番組のチェチェン人ゲストが司会者・出演者を人質にスタジオに立てこもる。事件がおきて10時間の間のいわゆる交渉人もの謀略スリラーで、どう決着するのかついつい気になって読み進まされることになる。スピーディなストーリー展開はまさにシネマ向き(元々が映画用の脚本を意図したのかも?)ですでにノルウェーで映画が公開されているとのこと。全体を通してやけに無国籍なシナリオ(事件場面がどこの国でも通用する…)であり、人物とか風景とかもうちょっとノルウェーらしさがにじみ出ていると興味がわくか?
 引用は、テロ事件がおきて交渉人フィエルがTV局に到着するシーン。(2008.6.13 #548)


作家著作リストE Lagoon top copyright inserted by FC2 system