FITZHUGH,BILL /ビル・フィッチュー
優しい殺し屋 | ピント | PEST CONTROL (c)1996 | 田村義進訳 徳間書店,1997 |
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『ボブはおぼつかない足取りで車のほうへ歩いていった。アルコール検知器にかけられたら、間違いなく酒気帯運転になるだろう。だが、ボブはかまわずおんぼろピントに乗り込んだ。ガソリンタンクが後ろにあるので、追突されたら、爆発するかもしれないといったことは考えもしなかった。
スプリング通りにはいったとき、黒いキャデラックが横に並んだ。クラクションが聞こえたので、見ると3人の男が拳銃を構えている。
強盗だろうと思って、ボブは右手の人さし指で"ちょっと待ってくれ"の合図を送った。それから、左手でハンドルをもち、右手でポケットから財布をとりだして、中味を見せた。肩をすくめると、口を、"ごめん"のかたちに動かした。運転をつづけた。
ボブが平然と去ったので、殺し屋たちはきょとんとして顔を見合わせた。』-
--COMMENT--
始めて出会う著者だが、ボブ・ディランという名前(スペルは違う)の殺し屋(だたし、ゴキブリなど害虫の)が本物の暗殺者に標的にされるという、とことんハチャメチャ大サービスのコメディー・クライムというかユーモア・スリラー。確かに3ページに一回は笑える保証付でした。
主人公のフォード・ピントは何度も出てくるのですが、その度に、ガソリンタンクが後ろにある欠陥のことがコメントされてます(夢にでてくるのがダッジ・ラムで、本当はAMCホーネットが欲しいのだが)。ほかにも、ターゲットが事故死してしまうフェラーリ・テスタロッサ、駐車違反になってしまう暗殺者のダッジ・スピリットなど車ネタも大爆笑! ニューヨーク土地、人々がリアルに描かれているのも楽しめる。(98/03)
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