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Garrison, Paul /ポール・ギャリソン

死の航海BMW740Buried at Sea (c)2002大森洋子訳 扶桑 2011

『スタジアム・ジャンパーを着て、野球帽を後ろ前にかぶった男がシャノンをつけていた。彼女は昨夜、ウェストポートの両親の家を出たとき、男の乗る凸凹のトヨタ車にはじめて気付いた。近隣の屋敷の中でそのトヨタ車はとびきり目だった。どこかの家のメイドならそんな車も運転するかもしれないが、スタジャンに後ろ前の野球帽の男にそれはないだろう。
 今朝、男の乗る古ぼけた車は、シャノンの借りている安アパートから通りを隔てた向かい側に停まっていて、ブリッジポートのこのあたりの景色にはぴったり合っていた。--中略--
 シャノンはウェストポートのクラブへ向かった。朝早かったが、I-95号線は混んできていた。大型トラックやボックス型SUV車の群れの中で彼女の車体の低いBMW740は見つけにくい。シャノンはスピードを上げると、車の頭を振って、追越車線に入った。これで、あいつ、いらいらするにちがいないわ。トヨタ車はスピードを上げて追い、彼女の車が見えるそばまできた。 』

--COMMENT--
 海洋冒険小説作家ジャスティン・スコットの別名作品。ポール・ギャリソンとしては著作5点があり、初の邦訳。スポーツトレーナーのジムが老企業家ウィルに雇われ50フィートのクルーザーでカリブ海のバルバドスから南米に向かうが、ウィルのパテントを狙う財団組織に追われる羽目に。アルゼンチンからさらにフォークランド島、南極洋をへてフロリダに向かうというまさに大西洋を駆け巡る大海洋冒険が堪能できる…なんと上下800ページのほとんどが海上シーン!! もともと大好きな、ジャック・ヒギンズ 、ハモンド・イネス、D・A・レイナー、アントニー・トルー、ジェフリー・ジェンキンズ、デズモンド・バグリイなどの海洋冒険ものに劣らない面白さであった。
 引用はジムがeメールでやりとりする恋人シャノンがコネティカットで付回される数少ない陸上のシーン。ジムの中古のホンダ車、ブエノスアイレス近くで助けてもらう元海軍大佐のアウディが出てくる。最後に明らかにされるウィルの秘密のなかで"エハルト・セミナー・トレーニングの<エスト>"というのが出てくる。アメリカで流行ったヒューマン・ポテンシャル・ムーブメントらしい。Ref.ワーナー・エアハード(Werner Erhard)と est (2011.9.3 #705)


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