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Goddard, Robert/ロバート・ゴダード

一瞬の光のなかでロータスCaught in the Light (c)1998加地美知子訳 扶桑2000

『ただひとつの手がかりは、きのう、セント・ピーター・ポートでエリスが運転していたという鮮やかな黄色のロータスだった。それを追跡することはできるはずだ。それなら可能だ。
ダフネを見送ったあと、空港のレンタカーのデスクをまわってみた。彼らはロータスは扱っていないようだったが、ディーラを教えてくれた。  「それは本土の方のモデルのようですね。そんな珍しい車を扱った覚えはありません。でも実際には、そんな車はあなたがお考えになるほど目立つわけではないのです。大富豪は特注のスポーツカーで走り回ってみんなに注目されるとご満悦なんですよ、ここの制限速度だと、サードに切り替えるだけで違反切符をきられることになるんですがね。車のほとんどは中古になったときの価格が下がらないように、フォート・ジョージのエアコンのきいたガレージに置いてあります。なんという無駄でしょう。ねえ?」 』
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 『蒼弯のかなたへ』には手こずっただが、どんどん翻訳が発刊されてファンが多いようなので読んでみた。過去の人物が乗り移った女性の奇怪な行動と犯罪が同時進行するという手のこんだ進行が柱となる、まさに“謎また謎”・・とけっこうややこしいが、よくできたミステリーってこんなものかなぁと思わせる。この謎の女性が乗っていたのがロータスで、ミステリアスなイメージを高めているかな。この場面は、イギリスの高級リゾートの島、ガンジーです。(2000.5.29)

永遠に去りぬ二人乗りの白いメルセデスBorrowed Time (c)1995伏見威藩訳 創元 2001

『ハーギスト尾根への坂道は、リッジボーン・ロードという狭いタールマック舗装の道路で、何軒か家を過ぎると、それは石径に変わる。登り始めたのは、7時をまわっていた。急坂ではるが、勾配は一定している。左右の羊歯の土手のそこかしこでぶゆが群をなし、葉むらから暖かな陽射しがもれる。だれかに問われたら、すばらしい夏の宵だと答えていただろう。
 道の突き当たりと荒れ地のの境に、横木5本の門があった。門の右手の木の下に、車が一台停まっていた。Gナンバーの二人乗りの白いメルセデスで、洗ったばかりらしくつやつや輝いていた。私は惚れぼれと、羨みのまなざしで、そのそばを通りながら、ブリュッセルで乗っている、ブリキの缶に車輪をつけたようなちっぽけな代物を思い出した。幸せをいっぱい手に入れる人間はいるものだ、とつくづく思った。』
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 ゴダートらしい、込み入ったプロットの物語色の強い長編ミステリー。巻末解説にあった「プロットの小説」と「キャラクターの小説」との対比の意味がよく分かる作品とも言える。この物語の主人公ロビン・ティマリオット自身はごく平凡というか、事件にまきこまれても、主体的な反応が少なく、読んでいてこっちがイライラするほど無性格に描かれています。つまり、私なんかついついスーパーヒローじゃなくても、主人公の考え・たち振る舞いに格好の良さを求めてしまうキャラクター支持派なんでしょうね。
 引用は、ウェールズへ山歩きにでかけた主人公が、事件の発端になる女性に出会う直前の、彼女のメルセデスSLを目にするシーン。(2001.5.6)


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