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GORES, JOE /ジョー・ゴアス

ダンカーニー探偵事務所50ー60年代米国車THE MAYFIELD CASE AND 10 OTHER STORIES, (c)新潮,1990

『バラードはマイクを手にとって赤の送信ボタンを押した。
「こちらサンフランシシコ6号、現在位置、オーク通りとブキャナン街の交差点、東に向かって走行中。どうぞ」
・・・・
「オークランド3号が、ベイブリッジ上にて赤のコメットコンヴァーティブルを尾行中。プレートナンバー、チャーリーのC、エックス線のX、ケネスのK、8ー8ー1。
正式所有者はポーク通りのカリフォルニア市民銀行、車の回収のみ、契約条件違反車」』

--COMMENT--
ジョーゴアスお得意のサンフランシスコを舞台とする短編探偵もの11編各々が、自動車ローンの未納、滞納者、盗難車の追跡調査と回収に繰り広げられる生き生きとしたDKA(ダニエル カーニー アソシエイツ社)のスタッフの人間味が良く伝えられる作品。
当然、物語毎に設定されたクルマたちが登場し、作者の思い入れが良く伝わってくる。黄色いダットサン280Zなども出て来る。(91/03)

狙撃の理由トヨタ4WDWolf Time (c)1989新潮,1990

『斜めにさしかかる暁の明かりの中で、フレッチャーは小屋に最後の鍵をかけた。
ヴィクターと示し合わせてある場所に鍵をおくと、もうちらりと振り返ることもせず、古びたトヨタの4WDに乗って走り去った。
 衣類と洗面道具とキャンプ用品のほかにフレッチャーが持っていったのは、チャーリーが見事に保存処理を施した古い熊の毛皮だけだった。
その柔らかななめし皮のなかには、いつもチャーリーがいるような気がした。旅にいく彼を慰めてくれることができるだろう。』

--COMMENT--
 ミネソタの森に隠遁する元土木技師のフレッチャーが何者かに狙撃される。アメリカの大統領候補選を舞台に、ただ一人森をでて、見えぬ敵を追いつめていく時選んだ車がトヨタの4WDであった。
 子供の頃から、インディアンのチャーリーから森の生活とハンティングを教えられてきたフレッチャーが選んだ車がランドクルーザーとなった。(90/10)

路上の事件1942年型フォードCASES (C)1999坂本憲一訳 扶桑 2007

『「堕落するラスヴェガスか」と、ダンクはたちまち事態を理解して言った。
ダヴェンポートが喉をごろごろ鳴らして笑い、グレーの1942年型フォードのところで足をとめた。ダンクがその日の午後にほれぼれと眺め入った車だった。
「そいつがわかるのに、おれは2週間もかかった」
アーティスが前の座席に座り、ダンクは後ろの中央に滑り込んだ。
「2年前、ぼくはこれによく似た車をアラスカまで走らせましたよ。1942年フォードの4ドアセダン。グレー・ゴーストと名づけて」
「フォードが42年型を販売したことはほとんど知られていないんだ。くそったれのジャップどもがパールハーバーを攻撃したときにつくるのをやめ、46年に民生用の製造を再開したんだが、そんなのはにせの42年型にすぎなかった」
 パールハーバー、1941年12月7日。ダンクは、ローズヴェルト大統領の「この日はのちのち不名誉として忘れられることがないであろう」というラジオ演説を聞き、こわかったのと厳粛な気持ちになったのを思い出した。それは彼の十歳の誕生日より18日前のことであった。』

--COMMENT--
 ゴアズ自身の若かりし頃の体験をもとにしたロード・ノヴェルと言われていて、前半は各地を流転しながら様々な人との出会い事件に巻きこまれる。ボクサーの介添え役をやるラスヴェガスの部分がハイライトだ。後半はサンフランシスコに移って私立探偵事務所に勤め、目覚しい活躍をする一方で、恋人を失う。
 引用に出てくる42年型フォードは、持ち主のボクサーから主人公ダンクに譲られる。ヒッチハイクしながら大陸漂流をするため乗せてもらう車がたくさん登場する…"霊柩車ほどにも車体の長い白いキャディラック・コンヴァーチブル"、"エルヘッド型8気筒エンジン搭載のかなりくたびれた49年型マーキュリー"、"パロアルト出身の男の赤いMG"、"汚れた黒の39年型シヴォレー"。
他に"黒く長細い51年型リンカーン"、探偵事務所長の"淡青色の51年型プリマス"、"53年型マーキュリー・モンテレー"、"青と白に塗り分けられた52年型クライスラー"、"49年型の茶色のデソト・クラブクーペ"…と出てくるほとんどの車は製造年が表記されているのには驚き。車好きの多い米国人でも、そんなに車種型式の見分けのつく人がたくさんいるとは思えないのだが。(2007.10.27 #518)

32台のキャディラックキャディラック32 CADILLACS (C)1992木村仁良訳 ベネッセ 1998

『知らせというのは、もし最悪の状況になったら、亡くなる前に、スチューベンヴィルのジプシー野営地で後継者を選んで欲しい、とスティリーが妻のルルに言ったといものだった。そして、34年前に自分の即位式に乗っていったのと同じ、完璧に修復されたピンク色の1958年型キャディラック・コンヴァーティブルの中にはいって埋葬されたい…というものもあった。
 きょう日、そういう車は自由市場でだいたい4万6千ドル余りする。それも、もし見つけられればの話だ。もちろん、有史以来自由市場で何かを買ったジプシーは一人もいない。買うことは、ほかに方法がない場合にすることだ。一言で言うと、買うことはカモのすることだ。ロム、つまりジプシーは自分のことをカモとは思っていない。堅気の世界、つまりガジョの世界を相手にするときのモットーは、「よそ者はただよそ者、われわれはジプシー」というものだ。』

--COMMENT--
 タイトルからして読みたかったダン・カーニー探偵事務所シリーズ長編第4作をようやく手にする。忽然と盗まれた32台のキャディラックをDKA所員たちがすったもんだの駆け引きをしながら回収する訳だが、主役が判然としなかったりでかなり読み飛ばし。そのせいか、なぜ32台なのか最後までよく分かりませんでした m(__)m
 車についてはタイトルどおりやたら沢山登場する。2回分のローン返済が滞っている1991年型コンチネンタル、同じく支払い滞納の"8万3千ドルのメルセデス500SLスポーツ・コンヴァーティブル"、DKA女性所員の"黄色いニッサン280Z"、フリートウッド・クーペ、ジプシー占い師のカモになるヤッピーのアルファロメオ・スパイダー、レクサスLS400とトヨタ4ランナー、自動車狂の74年型プリマス・ロードランナーなどなど。サギにあったキャディラックの内訳─エルドラード、フリートウッド、アランテ、セヴィル、ブロアム、ドヴィル、リムジン…がわざわざ目次ページにリストされているほど。恐れ入りました。(2007.11.1 #519)

硝子の暗殺者トヨタ・フォーランナーGLASS TIGER (C)2006坂本憲一訳 扶桑 2011

『1月19日。ハル・コーウィンがトラッキー郵便局の前の駐車場をごくわずかに足をひきずりながら、まるで耕されたばかりの地面を踏むのをためらうかのように、用心深く横切った。カリフォルニアとネヴァダの州堺、海抜6000フィート近いこの地では、極寒の冷気が銃弾で傷めた肺にひどくしみた。
 ジャネット・ケストレルが、駐車場の奥隅に外向けにとめた彼女の古いダークグリーンのトヨタ・フォーランナーの運転席から降りてきた。いつでも逃げ出せるようにか、エンジンはかけたまま。』

--COMMENT--
 ゴアズのクライム&アドヴェンチャーものとしての遺作、『狙撃の理由』と似ておりともに森林・原野での活動を得意とする元スナイパーと元CIAの暗殺者ソーンとの闘い。まぁよくあるプロフェッショナル同士の壮絶だけど常套的なディテールだけで新鮮味は薄く、実は途中で読むのをギブアップしました。
著者は本年2011年1月に逝去。(2011.10.30 #715)


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