バッファロー・ボックス | クーペ | THE BUFFALO BOX, (C)1942 | 中桐雅夫訳 早川 1961 |
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西部史を題材にしたミステリーで名高い往年の作家だ。やはり西部史マニアのハリウッドの私立探偵サイモン・ラッシュが、悲劇のダナー隊の末裔から調査を依頼される…
なかなかとぼけた感じのラッシュと、助手のエディ(上記引用で車のドライバーを務める)とのかけあいなど楽しい。
ロスからネバダ州境を北上し、Bishop、Yosemite、LakeTahoe、冬場のRenoへいたる長距離のドライブの模様なども出てきて興味深い。(2005.10.5 #375)
走れ、盗人 | 黄色いコンヴァーチブル | RUN,THIFE,RUN (C)1948 | 庫田謙一訳 早川 1962 |
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錠前職人トミーはその腕がみこまれて、銀行の貸金庫を襲う仲間に引き込まれる…
ハードボイルドタッチのクライムノベルだが、ほんのちょっとした出来事が結末を変えてしまうサスペンスが印象的。
物語の発端になるのが"黄色いコンヴァーチブル"で、上記は二度目の出会いのシーン。主人公トミーの"オンボロ車"(としかでてこない)、トミーを見張る探偵の"ベージュ色のクーペ"、トミーと折り合いの悪いプレイボーイの"コンヴァーティブルのロードスター"、逃走用に中古車店から買う"ビュイックのクラブ・クーペ"(セールストークが笑わせる)、などが、サンセット・ブールバード、マルホランド・ドライブ、ビヴァリー・ヒル、コールドウォーター・キャニオンなどロサンゼルスを縦横にドライブするシーンも多く楽しめる。
43年前の翻訳にもかかわらず、コンバーティブルではなくて、コンヴァーティブル…と表記されてけっこう新鮮だ。(2005.10.7 #376)
フランス鍵の秘密 | 旧型の小型フォード | THE FRENCH KEY (C)1940 | 仁賀克雄訳 早川 2005 |
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フレッチャーとクラッグは、インチキな本を街頭で売り歩く、そうテキヤだ。その凸凹コンビが殺人の疑いをかけられた希少な金貨にまつわる事件に巻き込まれる。二人組と周りに登場する人物とのやりとりがとてもスラップスティックで楽しめる。
上記はネバダ砂漠にでかけ中古車セールスをやっつけるシーンで、この後とんとん拍子に話がすすみなんと30ドルの中古車をせしめてしまう。ご丁寧にも、旅を終える時にこの車をまたふっかけて売る場面も書かれている。
身振りのいい私立探偵の"6千ドルはする、まっ黄色のセダン"、金持ちの屋敷に入り込むために雇った"1942年型のキャディラック・リムジン"なども出てくる。また、"1833年のキャプテン・ボンヌヴィル探検隊"のごとく、西部開拓史を得意とする作者のウンチクも挿入されている。(2005.10.15 #377)
ゴーストタウンの謎 | ビュイック、パッカード | The silver Tombstone Mystery (C)1945 | 小西宏訳 創元 1965 |
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Johnny & Samシリーズ第8作は、一儲けしようとカリフォルニアにやってきたが、エンコしたポンコツ車を押してもらって助けてくれた男と知り合ったのはいいが、ゴーストタウンになったツゥームストンの銀鉱にまつわる事件にまきまこまれてしまう。
全編にわたっての口八丁、手八丁のジョニーと、嫌々ながらそれに付き合わされるサムのかけあいが、もう絶妙に面白い。引用したところは、『フランス鍵の秘密』でもでてきた中古車セールスマンを騙すシーンで、さも車を買うと見せかけて、逆に35ドルで仕入れたオンボロ車を200ドルで買わせてしまう。その資金で、まっとうなシボレーを入手してアリゾナ州のタクソン(ツーソン)の銀鉱を調べに出かける。なんとも60年も昔の話なので、その車も途中で故障してしまうのだが、その道中もいろいろハプニングがあって楽しめる。(2005.10.22 #378)
海軍拳銃 | タクシーなど | The Navy Colt (C)1941 | 中桐雅夫訳 早川 1957 |
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Johnny & Samシリーズ第4作は、グルーバー・ミステリーの代表作ともいわれていて、ポケミス版に加えて、創元から『コルト拳銃の謎』というタイトルでも刊行されている。冬のシカゴを舞台に、ジェシー・ジェームズの使っていたコルト拳銃の争奪戦に巻き込まれるジョニィとサム。
グルーバー・ミステリーの共通パターンの【金目当ての犯罪に遭遇>他殺死体に出くわす>警察に追われるけど、なんとか巻いて逃げおおせる>探偵好きなジョニィはなにしろ積極的で何所へでもでかける>金がないため行き帰りの移動・ドライブに苦労する>道すがらでも必ず変な人物に出会う>ホテルのマネジャーといつもトラブルになる>いかす女性がちょいと登場する>力自慢だけかと思わせるサムは、なんとシナリオ作家志望で場面場面でけっこうしゃれたセリフをいう…】がこの作品にも当てはまって、何かほっとする、期待通り!!、玉屋!!といった按配だ。とにかくおっそろしく早いテンポで、シナリオ進行のディテールの整合性はともかくも大いに楽しめる。
今回は珍しく、上記のタクシーや、セント・ポールからの帰路に乗る闇バスのリムジン以外のクルマは登場していない。引用部分で、シナリオ作家になりたいサムがカリフォルニアに行きたがっていることが伺え、同シリーズ第8作『ゴーストタウンの謎』のロサンゼルス編につながっていくことが分かる。(2005.10.24 #379)
笑うきつね | ボロ車 | The Laughing Fox (C)1940 | 宇野利泰訳 早川 1962 |
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Johnny & Samシリーズ第2作は、家畜共進会が開かれるアイオワ州のシダー・シティに出かけたジョニーとサムが親切心から、ホテルをとれなかった養狐業者に同宿をさせてあげたところ、何者かに殺され、地元警察から殺人犯の疑いをかけられる。…と、いつものパターンだが、登場する多士済々の人びと、そのユーモアたっぷりの掛け合いがもう堪らなく面白い。
ジョニーの口八丁の好例は
・有料ガレージの駐車料金を払わずにバイバイする手立て
・共進会会場のゲートを無料で通過する方法、これは2通りも出てくる
・講演会の講師を追っ払って、壇上で本のセールスをしてしまうやり方、等々
残念ながら、上記引用に出てくる車名は不明だ。何度も何度も、"ボロ車"と称されて登場するので、よほどのオンボロなのだろうが、この車で、シダー・シティから、560マイル離れているシカゴへの往復を三十時間でやってしまう。
他に、富豪の養狐業者の妻の、"黄色く輝いているロードスター"も登場する。
なお、シカゴの市立図書館を訪ねるシーンが3回もでてきていた『海軍拳銃』に引き続き、本訳書p234に、新聞を読むには遠い図書館に歩いていかなければならない…という文がでてきていて、この当時から公立図書館が一般化している姿がまたうかがえた。(2005.10.27 #380)
愚なる裏切り | エルドラドー | RUN, FOOL, RUN (C)1966 | 大門一男訳 講談社 1968 |
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ノン・シリーズのサスペンス長編、と言っても、歯切れよく軽快なストーリー運びなので、ざっと3時間ほどで読めてしまう。《ウィークエンドブックス》という出版タイトルはうまくつけたもの。
コピーライターの仕事とか人生にうんざりしていた、ライフル射撃が得意なトミー・ロールズのところに狙撃の依頼が舞い込む。ロスから、バス、飛行機、鉄道、車…でカナダまでの逃避行に物語の半分ぐらいが費やされているという変わった構成だ。
引用は、ライフル射撃クラブで、怪しげな依頼人と出会うシーン。ロールズ自身の車は、他の小説でも同じ"コンヴァーティブル"であり、当時は、コンヴァーティブルがごく普通の車の通称だったようだ。ほかに、逃亡の途中に60ドルで購入するオンボロのシボレーなんかも出てくる。(2005.11.7 #382)