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INNES, HAMMOND /ハモンド・イネス

幻の金鉱ランド・ローバーGOLDEN SOAK, (c)1973早川書房,1976

『「一週間して、僕から連絡がなかったら、君はなんとかして空からの捜索隊を出動させてくれ・僕たちはまず燃料と食料を仕入にマウント・ニューマンへ行く.そこから、シルヴァニアを通って、その君の言っていた農場へ向かう」
「マラマンダ?」
「ああ」私はケニーを起こしに行った.
 ケニーが身支度を整える間に私はランド・ローバーを点検した.石油缶と水と書いた缶がいくつも積んであった.銃もあった.シャベルとサンド・マット.食料を入れるコンテナ.バケツ.斧.鋸.燃料用の漏斗.私は工作場へ行って古い袋にそこにある限りのランド・ローバーのスペア部品を残らず詰め込んだ.ジャネットがやってきて、手伝うことはないかと言った.私は、何でもかまわず水と燃料を入れることの出来る容器をありったけ集めてくれと言った』
--COMMENT--
 僕が冒険小説に引き込まれた初めの作者とも言うべきハモンド・イネスの“純”アドベンチャーノベル.以前から探していた本であるが、なかなか見つからず、ようやく新宿中央図書館で捜し当てました.
 西オーストラリアの砂漠地帯で、開拓者、山師、原住民などがおりなす過去の事件と、その謎を解くために厳しい砂漠への冒険行. 当然、生死をかけた舞台に登場してくるのはランド・ローバーであり、過酷な自然の中で唯一の守り神のように活躍する.(一ヵ所だけトヨタがでてきますが)
 また、イネスの魅力はそのストーリーだけでなく、自然の情景を執拗に、ダイナミックに描く力であり西オーストラリアの赤い砂漠にまさに読者は引きずり込まれてしまう.(92/09)

獅子の湖ランド・ローバーTHE LAND GOD DAVE TO CAIN, (C)1958伏見威藩訳 ソニーマガジンズ 2002

『「あんた、イアン・ファーガスンだろ?」
土煙のなかからぞんざいに声をかけられて経緯儀から身を起こすと、会社のランドローヴァーが後ろに停まっていた。エンジンが静かにカタカタとアイドリングしている。運転手が身を乗り出して、フロントガラスの陰から、赤く日焼けした顔をぬっと出した。
「よし。乗れよ、大将。事務所であんたを呼んでいるんだ」
「なんお用かな?」
「知らん。急用だかって、おれを迎えによこしたのさ。きっと、あんたが水準測定を間違えたんで滑走路が傾斜しちまったんだな」にやっと笑った。よく若いエンジニアをからかって怒らせたりする男なのだ。私は数値を記入して、水準測量棒の係りの男にすぐ戻るからとどなってから、車に乗った。』
--COMMENT--
『特命艦メデュ−サ』が早川で1992年に出版されてから、10年ぶりに《幻の名作》として翻訳発行されたもの。カナダ東北海岸の奥地ラブラドルを舞台に、父親の傍受した無線通話の真偽をたしかめるべく探検にのりだすファーガスン、過酷な冬のシーズンに、地図上にない湖の捜索、そしてそこからの脱出行と、もう完璧な英国冒険小説だった。半世紀も前に書かれた作品とは思えないほど、いきいきと伝わる迫力は感激もの。
 車も多く登場していて、車名がでてくるのは引用した物語の冒頭部分。その当時としてはランドローヴァーしかなさそう。ほかに、輸送機、鉄道、鉄道工事用車両、ヘリ、カヌーなど物語の道具立てもたくさんでてくる。イネスは、約60作品を書いていて、既訳は25作品ほどだから、今後も楽しめる可能性がある。ヴィレッジブックスさん、よろしくね。(2003/01/13)


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