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KENRICK, TONY /トニー・ケンリック

スカイジャックシボレー・コンバーティブルSKYJACK, (c)1972角川,19 94

『ベレッカーは彼女のドアをノックした。「アニー、車のところで待っているよ。プラグをチェックしときたいんだ」
 眠そうな声が何かもごもご言った。
 ベレッカーは外へ出て、通りを渡って車のところへ行き、ボンネットをあげた。ライダー氏の車がいつもの場所をベレッカーのシボレーにとられて、やむを得ず2、3フィート前に駐車しているのを見つけて心中ひそかに凱歌をあげたが、よく見るとシボレーの前バンパーがへこんでいる。ライダー氏が自分の車をバックさせて、恐らくわざとぶつけたらしい。ちきしょうめ、とベレッカーは思った。 かがみこんでへこみを調べていると横で誰かが言った。「そのポンコツをどけろ、でないと牽引車を呼んできてひっぱていかせるぞ」 ベレッカーはしゃんと立って、「ライダーさん、もうすこし気を付けてバックしてほしかったな。見てくださいよ、このバンパー」 背が低くて筋ばった小男ライダー氏が、歩道ではね踊り、拳を振り回すさまは、漫画の主人公みたいだった。「今度こそそこへ止めたら車をぶっこわすぞ、早くどけろ!」
 「落ち着けよ、ライダー、何度言ったらわかるんだ。ここは公道なんだから、どこでも僕の好きなところへ止めて良いはずだろう」・・・・・・』
--COMMENT--
 しがない弁護士のベレッカーが謎につつまれたジャンボジェット機乗客の誘拐事件を金ほしさに追う。  上のシーンは自分の車をとめる場所を人につかわせたくない隣人との滑稽なやりとり。このあと延々と話が続くのですが、当然お互いの車を壊しあうドタバタになります。
 いずれにせよ、このミステリを読んだら、まず10回以上は腹の底から笑えることを保証しますし、ジャンボのハイジャックそのものもとてもよくできたストーリーです。ライダー氏の車は何か不明ですが、ほかに犯人グループの白いトロネードなども登場します。(92/1)


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