lagoon symbol
Lars Kepler /ラーシュ・ケプレル

催眠プリメーラHypnotisoren (C)2009ヘレンハルメ美穂訳 早川 2010

『シモーヌは窓辺に立ち、夜の闇に浮かぶ透明な影と化した自分の顔を見つめていた。父親の運転する古ぼけた日産プリメーラが表玄関の前に二重駐車されるのを目にすると、彼女はこみあげてくる涙をぐっとこらえた。ノックの音がしたとき、彼女はすでに玄関にいた。チェーンをつけたまま扉をあけると、一旦閉めてチェーンを外し、笑みを浮かべようとする。
「パパ」口を開くと同時に涙があふれだした。
ケネットは娘を抱き寄せた。父親の革のジャケットに顔をよせ、慣れ親しんだ革と煙草のにおいを嗅いだシモーヌは、ほんの数秒ほど、少女の時代にもどったような気がした。』
--COMMENT--
 へニング・マンケルなど最近注目されるスウェーデン作家(夫妻の共作だそう)のサイコ・ミステリ。過去に催眠療法をやっていた精神科医の家族に降りかかる不可解な事件。冬のストックホルムや近郊の描写(イングリッド・バーグマンの墓なんかも…)などは味わいがあってよかったが、登場する家族や国家警察警部などの人物の掘り下げがいまいちだし、不仲だった夫婦が終盤にいつのまにかよりを戻したり粗っぽい筋立てはげんなり。
 引用はミステリ登場は初と思われるニッサン・プリメーラ。スウェーデンならではでしょうね。他に、誘拐された息子について訊いて回るときに出てくる"黄色のポルシェ"、ソーシャルワーカーの"赤いトヨタ"など。(2011.2.7 #674)


作家著作リストK Lagoon top copyright inserted by FC2 system