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PETER KING /ピーター・キング

グルメ探偵と幻のスパイスいすゞSPICED TO DEATH (C)1997武藤崇恵訳 早川 2007

『朝食を食べていると、これから迎えにいくとガブリエラから電話があった。今度の車はいすゞの濃紺のフォードア・セダンだった。昨日の冒険のときのオンボロ車にくらべたら、段違いにランクが上がっている。明るい茶色のスーツはクリーム色のボタンがアクセントになっていて、それを着たガブリエラは一段とさっそうとしていた。新しい変装をほめると、ガブリエラは抗いがたい魅惑的な笑顔を浮かべた。
「千の顔をもつ女性だね…まぁ、顔まで違うわけじゃないけど…」
「ちなみに、今日の仕事は危険じゃないから」
「それって、今日は(銃器を)持ち歩いてないってこと?」
「最近じゃ、携帯してるっていうのよ。それにしても、まさかそんな。もちろん、身を守る手段はあるわよ」
「今日はね、ここにあるの」そういって、助手席とのあいだに置いたラフィアのバッグをポンとたたいた。』
--COMMENT--
 続々刊行されるグルメ系ミステリの最新版ということで…気のいいフード・コンサルタントがニューヨークに出向き、幻のスパイスの鑑定をするが、それが忽然と無くなり殺人事件にも巻き込まれる。気のいい、ちょっとおっちょこちょいの主人公だが、イギリス人としては珍しい性格付け。イギリス人から見たおかしなニューヨークの人、食べ物、習慣などがケッサク。
 引用のところは、ガブリエラ(女性)刑事が乗ってくるいすゞ車で、文中にもあるとおり、前日の変装車は"フェンダーがペコンとへこんだ、一度も洗ったことのないような黄褐色のフォード"。私のコレクションではISUZUが登場したのは、ピーター・ラヴゼイ『暗い迷宮』のイスズ・トルーパー以来の2回目と、同社の登場は稀有であります。
 NYに着いたとき、"ラトヴィアのリガから半年前にアメリカに来たばかりで、まともな英語がしゃべれないドライバーのタクシー"に乗るシーンなんかも大笑い。(2007.5.22 #478)


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