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Kurson, Robert /ロバート・カーソン

シャドウ・ダイバービュイック・リヴィエラSHADOW DIVERS, (C)2004上野元美訳 早川 2005

『リッチーが12歳になるころには、両親の仲がうまくいかなくなった。1975年2月のある夜、母フランシスが、リッチーがぐっすり眠っている寝室へしのび足で入ってきた。母は息子を揺り起こすと、スーツケースを渡して、それに荷物を詰めてから弟たちの荷造りを手伝えといった。
「どこへ行くの?」リッチーは目をこすりながら、母に尋ねた。
「フロリダよ」フランシスはいい、そう答えた自分に驚いた。その瞬間まで、フロリダに行くことなど考えてもいなかったのだ。
 午前2時に、フランシスは子ども3人を黒のビュイック・リヴィエラに乗せて、ニュージャージー・ターンパイクで南に向かった。ガソリンスタンドで地図を買い、リッチーに道案内を任せた。昼になると、車を停めて休憩し、子どもたちと一緒に仮眠した。そのあとまた車をずっと走らせて、フロリダ州ニューポートリッチーにある自分の母の家にたどり着いた。自分たちがくることを、母には知らせていなかった。ロザリー・ルーティは娘にキスし、孫たちをぎゅっと抱きしめた。そのときフランシスは、もうけっしてニューヨークに戻ることはないと知った。』
--COMMENT--
 サブタイトル《−深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち−》のとおり、1991年、ニューヨーク沖の海底で、なんと米軍すら認知していなかった謎のUボートが沈船を専門に潜るレック・ダイバーによって発見され、3人の事故死者を出しながらも、危険な深海ダイビングと関係者の調査を6年間も続けながら遂にその謎を解き明かすノン・フィクション。
 全く知らなかったレック・ダイビングの世界や、最後まで諦めずに執拗に調査を続ける二人がとてもよく描かれていて、まさに事実は小説より奇なり−そのものの。
 開戦初期に大きな戦果をあげ同盟国船団から恐れられたUボートが、暗号解読やレーダー探知技術が進み徐々に追いつめられていった過程も詳しく書かれていたり、沈船を神聖な乗組員の墓場として扱うダイバーたちの心情など興味深い。最終的に判明した<U-869>号の処女航海は、私の生まれた1944年1月でした!!
 上の車の登場シーンは、私のコレクションの都合でのせたもで、今回ばかりはつけたしですね…ダイバーのうちの一人の少年時代の回顧にでてきたもの。(2006.3.19 #405)


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