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Landay, William /ウィリアム・ランデイ

ボストン、沈黙の街レクサスMISSION FLATS (C)2003東野さやか訳 早川 2003

『ケリーと私は、白いレクサスに乗ったブラクストンが、アーケイディア郡で目撃された話をした。レクサスの名義はブラクストンではなく、高級住宅街ブルックラインに住む眼科医だった。だからナンバー・プレートが"I−DOC"なのだ。わたしはその車をローナー(借り上げ車)といったが、その言葉は正しくなかった。
「ハーフG・カー(準ギャング車)っていうんだ」ギトゥンズが訂正した。「密売人が郊外に住む金持ちジャンキーから借りる車のことだ。ドラッグの払いを現金でもらうかわりに、車を数時間借りるんだよ。そうすれば、警察に目をつけられずに車を乗り回せる」
「いい車だ」わたしはいった。「レクサスのクーペは」
「たしかにな。メインまではかなりの道のりだ。ああいう連中はベンツを好むが、レクサスだって乗り心地がいい。近頃じゃ国産車を買うやつなんかいやしない。いやはや…」』

--COMMENT--
 読みもらしていたCWA新人賞受賞の作品。デビュー作ながら、著者は6年間検事補の実務経験もあるそうで、警察の内部事情がしっかり書きこまれている。ただ、大卒のおぼっちゃん警察署長が、自分の町を放っておいてボストンの札付きギャングを追うプロットはなんとも不自然。最後の最後で明かされるどんでん返しは、読者を肩透かしすようであまり気分はよくない。
 抜き書きの"私"が主人公のベンで自分の車は"ボディが錆びだらけの古いサーブ900"、警察署パトカーのブロンコ、ベンが捜査を助けてもらう引退した刑事ケリーのトヨタ・カローラ、湖に沈んでいた被害者の"くすんだ黄色のホンダ"…が出てくる。ほかに<ギャングが乗ってきた"シツ"とかいう名の日本車>が会話のやりとりにでてきるが想像がつかない? 過去にアメリカで売られた日本車の車名をざっとレビューしてみたものの思い当たるものが皆無。さていつか原書に当たってみるかな(豊島区中央と千代田図書館に所蔵あり)。(2008.9.21 #566)


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