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Larsson, Stieg /スティーグ・ラーソン

ドラゴン・タトゥーの女フォード・アングリアThe Girl with the Dragon Tattoo (C)2005ヘレンハルメ美穂・岩澤雅利訳 早川 2008

『ミカエルはACで始まるナンバーの車を突き止めようとして数日を費やした。最初はどうしていいかわからず途方にくれたが、ヘーデスタで以前整備士をしていたという人物が、フォード・アングリアという大衆車だと教えてくれた。ミカエルが聞いたことのない車種だった。
 これを受けて自動車登録局に連絡し、1966年にAC3で始まるナンバープレートをつけたフォードの全車両のリストが入手できるか問い合わせてみた。担当者はいろいろ調べてくれたが、結局届いた返事は、大昔の登録簿をひっくりかえしてみることもできなくはないが、途方もない時間がかかるし、しかもそれは情報公開原則の枠外にある、というものだった。
 夏至祭の週末から何日もたってようやく、ミカエルは借り物のボルボを運転してE4号線を北に向かった。ヘルネーサンド橋のすぐ手前で一休みし、ヴェステルルンド菓子店でコーヒーを飲んだ。』

--COMMENT--
 当方の好きなへニング・マンケル以上にスエーデン・ミステリとして話題となったらしい<ミレニアム>シリーズの第一作。良心派で弱小経済誌の共同経営者であり記者が古い名門企業グループの元会長から30年前に失踪した同家の娘についての調査を依頼される。女性差別・暴力、自らの利益にばかりにはしる大企業などスエーデン社会の負の側面をテーマにした謎解き・経済・探偵小説と欲張りかつ壮大なエンターテイメント作品。
 ただし期待しすぎたせいもあるけど粗っぽい面も多い。背景説明ばかりでウンザリの上巻、目玉の超すご女性リサーチャーの特異すぎるキャラ、狙撃までされてものんびりの主人公、女性尊重といいながら主人公のフリーすぎる愛人関係、失踪女性と主人公が子どもの頃出遭っていたというようなストーリー上は無用なトピック、真犯人となった人物への伏線がまったくなし等々。どちらかと言うとシネマ用に向いた作品かな。
 引用は、当時の古い写真に写っていたクルマのオーナーを探すシーン。他に、企業弁護士のベンツ、現会長の"マリンブルーの最新型ボルボ"、女性調査員が借り出す警備会社のカローラ、編集長のBMWなどが出てくる。(2011.11.21 #718)


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