Levy, Marc / マルク・レヴィ
時間を超えて | ジャガーXK140クーペ | LA PROCHAINE FOIS, (c)2003 | 山田浩之訳 PHP研究所 2009 |
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『ジェンキンスのいつもとまたく変らない穏やかな朝の表情ほど、ピーターの気に触るものはなかった。
「あなたのお車のようですな。そうお待ちになるほどのこともないでしょう」
「音を聞いただけでどの車かわかるのか?」ピーターは嫌味を隠さうともせずに訊いた。
「いえ、もちろんどの車もというわけではありません。ですが、あなたのイギリス車は、その、こう言っては失礼ですが少々古びているせいか、クランク周りからドロロンというような軽い異音が出ているようです。そうですな、どこかこう、古き故郷の心地よいアクセントのような音といいましょうか」
ピーターは眉をひそめ、そしてようやく得心した。ジェンキンスは女王陛下の国の市民として生を享けた自分の姿に恋焦がれていたのだ。それで、アングロサクソン系の伝統が残るこのボストンの町で、彼なりに気品をたもつことを信条にしているのだろう。ジャガーXK140クーペの大きな丸型ヘッドライトが駐車場の入口に浮かび上がった。駐車場係がマンション入口前の白線にジャガーを停めた。』
--COMMENT--
絵画鑑定士のミステリかと思って読んだのだが、オビ<あなたは誰?これほどまでに印象深い愛の姿がかって描かれたことがあっただろうか…>を見返すと、どうもフランス版ハーレクイン風の作品で、ゴージャス過ぎて、かつ粗っぽい筋立てには閉口しました。PHPはこんなジャンルを出版しているんですね。
引用のようなシーンに加えて主な舞台がロンドンなので英国車がオンパレード。画廊の女性オーナーのオースチン・ミニ、その祖母のベントレー、郊外邸宅用のモーガン・ロードスターとランドローバー、絵画鑑定士の婚約者のサーブなど。 (2009.6.22 #600)
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