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LEWIN, MICHEL Z. /マイクル・Z・リューイン

消えた女ダットサンMISSING WOMAN, (c)1981早川,1987

『「もう一つは、車のことです」私は言った。
「どんな疑問かしら、早く聞かせて」
「二人はボイドのクルマで出て言ったと推定されているのですね」
「彼らは姿を消し、車もそのまま発見されていません」
「車の種類は?」
「日本製の輸入車です。ダットサンの白のスポーツカーですが、正式な型式名はわかりません」
「手配はしたのでしょう?」』
--COMMENT--
 ナッシュビルでの男女の失踪から端を発する事件。
消えた一人のプレイボーイの車が上記のダットサンであり、当然これはフェアレディZなんでしょう。
 この本は、リューインの私立探偵アルバート・サムスン・シリーズ第5作で、いわゆるハードボイルドのタフな探偵物とは異なり、うちひしがれた人間そのものを追うハメットの流れをくむものと言えます。(91/08)

眼を開く車名なしEye Opener (C)2004石田善彦訳 早川 2006

『タイヤがパンクしたのは、そんなことを考えていたときだった。
 電動ジャッキとインディ500のピットクルーの助けがなければ、手早いタイヤ交換はできない。ようやく<ハリーズ・ハダウェイ>の駐車場にはいったとき、わたしはぜいぜいと息をきらしていた。
 まだ、メアリーの車はそこにあった。わたしはほっとした。メアリーは運転席にいて、車をバックさせようとしているときだった。
 わたしは車から飛び降りた。「停めろ、停めてくれ! わたしはここにいる」
彼女は車を停め、ウィンドウを下ろした。わたしは言った。「タイヤがパンクしたんだ」
メアリーは少し考えてから、元の駐車スペースに戻り、車から降りた。「見せて」
 パンクしたタイヤは後部座席にあった。彼女はタイヤを下ろして、ゆっくりと回し刺さっていた釘を見つけた。「本当のようね?」
「なんだって?」
「口実のためいつもパンクしたタイヤを載せているような人もよくいるそうよ」
「わたしが遅れたら、中に入って嫌なことなんか忘れるまで酒を飲んでいるんんだろうと思ったんだが…」』
--COMMENT--
 十数年ぶりの<アルバート・サムスン・シリーズ>で、すっかり以前のプロフィールも忘れてしまほど。探偵免許を失って、簡易食堂をやっている母親のところに身をよせて娘と暮らしていたが、ついに免許が戻ってきて張り切って営業を再開。インディアナポリスの古い街を中心に家族と新しい恋人と展開するユーモアたっぷりなトークが楽しめる。
 リューイン作品では、車名はまず表記されないが、引用部分のような車にまつわるシーンは何箇所か書き込まれている。知り合って初めてのデートなのに、パンクで約束の時間に遅れて危うく彼女が帰りかける…、厳しい追及もお笑いたっぷりだが、このあと毎晩のようにデートを重ねていくことになるので、この先どうなるのか楽しみ。一説では、シリーズ最終作品かとも言われているが、ストーリーの感じではまだ続編がありそう。(2006.12.13 #450)


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