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LIPPMAN, LAURA /ローラ・リップマン

スタンド・アローン白いレクサスBUTCHERS HILL, (C)1998吉澤康子訳 早川,2000

『ジャッキーの白いレクサスは、通りの突き当たりにある化粧漆喰の屋敷のドライブウェイに停めてあった。それはアメリカ市民自由人権協会(ACLU)のバンパーステッカーが貼ってあるトヨタの新型カムリを塞いでいたが、レクサスの後ろには車がもう一台停まっていた。"港を救おう"というプレートがついている、黒いメルセデスだ。テスはメルセデスの後ろに駐車した。テスの持っているいるような古い車も、道路に出しておくと、ローランド・パークで物議をかもすかもしれないからだ。
「車のなかにいて、ママ」
「絶対に、いや」
「銃を、わたしの銃を持っている女性が、この家にいるのよ。興奮してて、何をしでかすかわからない女性が。ママを知らないから、ためらわずに危害を加えるかもしれないわ」』

--COMMENT--
 初めて手にした、ボルチモアの女性探偵テス・モナハン・シリーズ。この3作目は、養子縁組させられた子供達を捜すうちにおきる事件を扱ったもので、1998年MWA賞、PWA賞、1999年アンソニー賞、アガサ賞など受賞した話題作だそうだ。ボルチモアの街の描写、ユーモア、凝ったシナリオなど好きな手のミステリではあるが、たくさんの登場人物と、複雑すぎるプロットについていこうとするととっても疲れたね。いっちゃ悪行けど、翻訳がうまい・・とはとても言えない。
 車はなぜかトヨタ車が多く登場してくる。テス自身の車も『・・ダクトテープでマフラーが固定してある12年前のトヨタ・・州の排気ガス検査に不合格、二件の未払い駐車違反・・』、さてカローラあたりですかね? 引用した部分の白いレクサスは、ネイティブ・アメリカンのコンサルタント会社女性経営者のもので、以前は、白いキャディラックとか、リンカーンが出てきたものだが、レクサスがそのお株を奪ったようです。
 気に入ったのは、僕の好きなアン・タイラーの本のことが二箇所も出てきたこと。テスの叔母がやっている書店で、レジのそばに積み上げてあるとか、『スリッピングダウン・ライフ』のことが出てくる。(2002/04/29)

ビッグ・トラブルトヨタIN BIG TROUBLE, (C)1999吉澤康子訳 早川,2001

『7年生のときの社会を少しも熱心に勉強しなかったテスは、テキサスの町というものは広漠としたほこりぽい大草原から突如として現れ、バックミラーのかなかてへと瞬く間に消えていくものとばかり思っていた。
だがオースティンは、インターステイト35沿いに並ぶ一連の小規模なショッピングセンターのように、徐々に現れはじめたという感じだった。小さな青い花の咲く草原はどこ?
 レディ・バード・ジョンソンのハイウェイ美化計画は、いったいどうなってしまったの? テスの目は、見慣れない地元の食料品店やコンビニの名前にひきつけられた。<HEB> <サークルK> <ストプンゴー>
 道路は混んでもいて、テスの故郷で経験したことがあるラッシュアワーよりもひどかった。トヨタがインターステイト35の丘の上に達し、前方にテキサス・キャピトルのビルが、その向こうに川か湖の輝きが見えるというのに、ちっとも進まなかった。テスは圧倒され、どっと疲れもした。
 ワコーの道路沿いのレストラン<ヘルス・キング>にいた。あきれるほど健康的ではない料理を専門にしているような店だった。その朝、ダラス郊外で車を満タンにしたとき、ガソリンスタンド従業員が教えてくれたのだ。テスはコーヒー・ミルクシェイクのかすを吸い上げ、ハンバーガーの最後のかけらをエスケイにやった。中身の肉よりパンのほうが多かったが、それでもエスケイは喜んだ。』

--COMMENT--
 シリーズ4作目は、テスの元恋人クロウが行方不明になったテキサスで、古い名家の家族の間の事件を追う羽目になる。この訳者のタッチに慣れてきたせいか、前作よりは登場人物に親しみを覚えたし、なんと言っても舞台となるメキシコ国境に近いサン・アントニオの街の描写とか、人々、会話、いろんなお店、食べ物・飲み物・・などのディテールが楽しめました。  この話のほうには"トヨタ"が、20万キロ走ったカローラ・・と説明されていたし、やたらと日本車が多く登場してきます。バンドの女性ボーカリストの"ニッサン・セントラ"、地元の新聞記者の"古いダットサン"、刑事弁護士の"レクサス"等々。またまた、アン・タイラーもでてきて『アクシデンタル・ツーリスト』が引用されていてにんまりです。(2002/05/05)

チャーム・シティトヨタCHARM CITY, (C)1997岩瀬孝雄訳 早川,1999

『5分後、テスはもう12年も使っているトヨタに乗っていた。トランクにはキプルが積まれていた。エスケイは後部座席に立って、車がカーブを切るたびに体を滑らせ、道路のくぼみで車がバウンドするたびに鳴き声を発していた。
 くぼみは15フィートおきぐらいにあった。きちんと補修されたことのないボルチモアの道路は、この冬もひどい状態だった。ハイビームの後続車がぴたりとトヨタにつけたままフェルズ・ポイントまで着いてきそうだった。ついにはエドモンドソン通りで赤信号を突っ切って、無礼な後続車から逃れた。』

--COMMENT--
 テス・モナハン・シリーズの2作目で、やはり各賞をとった。伯父に頼まれてグレイハウンドのエスケイを預かり、車に乗せて帰るシーン。このエスケイにまつわる事件に巻き込まれる。ボルチモアの街の情景がいきいきと描かれているのが楽しい。
 テスにつきまとう身元不明の連中の車が、「明るいブルーのAMCホーネット」「茶色の塗装が剥げてその下のサーモン色が見えているビュイック」「黒いオールズモービル」とんどん変わるし、65年型マスタングとか、ホンダ・アコードなども登場するる。(2002/06/23)


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