ベイツ教授の受難 | フォード・フォーカス | Deaf Sentence (C)2008 | 高誼進訳 白水社 2010 |
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"コミック・ノヴェル"の大家ということで興味があって読んだもの。老境にさしかかった難聴になやむ元言語学教授の身の回りがユーモアとペーソスを混ぜて綴られる。一人称と「彼」の3人称の使い分けに意味がありそうだが狙いはよく分からず。
クリスマスを挟んだ11月から、どんどんぼけてくる父親をみとる3月までの交流が主題だが、老い、死に深く切り込むのではなくいろいろな誘惑に打ち勝ち、家族に気を遣いながら、外から見れば滑稽でも淡々とこなしていくのが人生だ…と言っているように思う。ページ毎にくすくす笑えるシーンがたっぷり。
引用は、クリスマスにロンドンに住む父親を迎えに行くのを列車にするかクルマにするか思い悩むところ、ちなみに、主人公のクルマは"補聴器をつけないで運転するとベンツのように静かに走る、買ってから4年経つフォード・フォーカス"。ほかに、ロンドンで乗る"使い古した赤いホンダ"のミニキャブ、一番景気がいい息子の"子どもの安全のためポルシェから買い換えた黒のBMW 4x4"、ポーランドのアウシュヴィッツ訪れるときの"古い黒のフィアット"などが登場する。(2011.12.16 #720)
恋愛療法 | 日本車 | THERAPY (C)1995 | 高誼進訳 白水社 1997 |
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老年にさしかかったテレビ台本作家が原因不明の膝の痛みに襲われ、いろんなセラピーにかかり、最後にキルケゴールにのめりこむが、そのうち30年連れ添った妻との仲も怪しくなってくる…。ユーモアとペーソスたっぷり。ただし440ページをしっかり楽しむにはかなりの忍耐力が必要かな。
引用は、とても気に入りながらなかなか買う決断ができず、ショールームにあった販売車が売れてしまってからデーラーに文句をつけようやく入手した日本車。その耽溺ぶりからも主人公の思い込みの強いキャラが伺えるなぁ。(2012.1.12 #723)