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MACDONALD, JOHN D. /ジョン・D・マクドナルド

レモン色の戦慄クーガー、ダットサンほかTHE DREADFUL LEMON SKY, (c)1974角川,1983

『スコーフのことだから、ダークブルーのクーガーの覆面パトカーのハンドルをしゃちほこばって握り、時速35マイルの竹馬並のスピードで、えっちらおっちら走るのかと思っていた.ところが、なんとスコーフ先生、運転席に座ってシートベルトを締めると、おもむろに白い帽子をちょいと前に傾け、悠然とシートにもたれてハンドルを指先でつまみ、込み合う道路をまるで油を塗った鰻よろしく、すいすいとはしり抜けて行くではないか.とても運転のエキスパートには見えないが、これはもうまごうことなき大エキスパートなのだ.わたしは彼にそう言った.すると爺さん、ちっともうれしかないよというような微笑を浮かべて、「舗装も何もしていない田舎道っていうサーキットでさんざ時間と金を使ってきたおかげだよ.こないだおまえさんの車に乗せてもらったが、なかなかどうしてうまいものだ.ただ信号で止まって発進するときの、車線の選び方がちょいととまずいな」』
--COMMENT--
 この本は日本でミステリーファンの最右翼とも言える馬場敬一さんの「フットノート・パレード」(話の特集、85/11刊)に紹介されていたのでさんざん探して、ようやく杉並区中央図書館で見つけたもの.
 馬場敬一さんは、「スペンサーの料理」でも有名で、ミステリーの本質はスートリーではなくて(スートリーはみな似たり寄ったり)、ミステリーの背景となる社会のサブカルチャーたるディテイルに徹底的に割り切ってこだわるという考えなんです。
 さて、「ミステリーにおける自動車について」のサブタイトルで、この人が挙げたのが上記の作品。 なにしろクルマたっぷり出てくる。“それがまた、ブランド名をちゃんと明らかにしながら出て来るのが、いい。普通の作家がよくやるように、黒塗のセダンなどと書かないで、ダーク・ブルーのクーガーの覆面パトカーとするところが、よろしい。具体的に書く方がイメージが広がるではないか。”などと、結構クルマにも詳しい説明が続々とでてきてしまう。
 全部を引用するのは大変なので以下車名だけならべると、黄色いグレムリン、白のコンチネンタル、上記のクーガー、フォルクスワーゲン、オレンジ色のダットサン、フォード・ステーションワゴン、烏の濡れ羽色のキャデラックなどなど(noted 93/10)

ディベロッパートヨタ、BMWBARRIER ISLAND, (c)1986集英社,1991

『「あの赤いトヨタは奥さんのだろ?」と、ギブズが言った。
「昨日、空気が抜けちゃってさ。左の前輪の減りかたが悪くて、タイヤ自体がへこんでしまっていたんだ。ウォーリーが取りにきて、5時までになおして持ってきてくれることになってる」
・・・・・
 ローリーはそう返事をして、机のはじにおいてある秘書用の椅子に腰を降ろした。 ドーンが会議の記録を取るためにいつも座る椅子である。』
--COMMENT--
 ミッシシッピー・サンベルトでの高級住宅地開発の企みに巻き込まれる不動産会社の共同経営者が、上にでてくるギブズとローリー。
 ローリー自身の車は不明ですが、妻のトヨタ、多分FF車なのでカローラあたりと思いますが・・・・、を修理のため会社に持ってきていると言うだけのさりげない会話からでも、ローリーの堅実なキャラクターがつたわってきます。
 一方のギブズは、別なところに出てきますが濃いブルーのBMWをもっており、ストーリーの展開とともに、それらしい性格として描かれてきます。
 マクドナルドは様々なジャンルの短編小説を手掛けてから、ミステリーものにも移ってきたそうなので、単なるサスペンスというより、社会派小説のような読みごたえのある内容になっています。(91/09)


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