lagoon symbol

T.J.MacGregor/T・J・マグレガー


エヴァーグレイズに消えるサンダーバードOut of Sight, (C)2002古賀弥生訳、早川 2004

『「フィッシャーだ、サム・フィッシャーってんだ。友達はサミーと呼んでる」処方箋をシャツのポケットに入れてぽんとたたき、ガレージのドアをするするとあけた。
 なかの薄暗がりに目が慣れるのにしばらくかかった。オイルとガソリンのにおいが立ち込めていたが、ありがたいことに涼しかった。大きな汚れた窓が天井の近くに一列に並んでいた。その下はロフトになっているらしい。サムがスイッチをいくつか入れると、頭上の灯りがさっとともり、ストロベリーレッドの57年型サンダーバードとアンティークのメルセデスが姿をあらわした。どちらもコンクリートブロックに載っていて、あちこち修復されている最中だった。
 ガレージの右側にはタイヤが積み上げられ、左側には段ボール箱がずらりと並んでいる。奥の壁の前はすべて作業台になっていて、数千ドル相当と思われる工具や自動車部品が載っていた。
「じきに直るよ」ふたりで散らかった作業台の前に行き、サムはペンチを手にとってタイヤから釘をぬき穴をふさいでエアを入れた。スペアタイヤにもエアをいれアンディの方へころがした。「これでどうだ」
「完璧だよ、サム。いくらだ?」
「おあいこってことにしようじゃないか」』

--COMMENT--
 米探偵作家クラブ・ペーパーバック賞受賞作をレビューしていて、なにやら私の好きなフロリダ系ミステリらしいタイトルを見つけたもの。超能力や超常現象ものを専門とするT・J・マグレガーということで、本書もまるでSFのようだ。しかし、追いつ追われつのサスペンスやら、ミステリとしてのストーリーがしっかりとしていて楽しめる。
 引用は、エバーグレーズ湿地にキャンプしにきたファミリーが、パンク修理のため立ち寄った僻地の<ラスト・ストップ・クイック・ストップ>店の情景。店もそれっぽい名前だし主人も変り種だ。作者のマグレガーって、ようやく途中から女性だったのだ!!と分かった(^○^)
 このファミリーのジープ、透明化実験から逃亡したローガンの支援者のランドローバー、透明化されたファミリーを救出する弟の"黒いフォード・エクスプローラー"、実験プロジェクト・リーダーのポンティアック、エクアドルの祈祷師の娘の"白っぽい四駆のトヨタ"など。(2007.1.17 #456)


作家著作リストM Lagoon top copyright inserted by FC2 system