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John Mannock /ジョン・マノック

Uボート113 最後の潜航小型トラックIron Coffin (C)2004村上和久訳 ヴィッレジブックス 2007

『船内の狭っくるしい乗員区画で、私の忠実な友でもある仕事仲間たちは、陸への到着が遅れるという予期せぬ知らせをとうてい冷静になど受け止められなかった。
「おい、冗談じゃないぞ」ガストン・メシェは目元にただよう<キャメル>の煙に目を細めてうめいた。
「金曜日の夜だぞ、あんた。おれは2週間以上、酒を一適も飲んでないってのに、今度は<ティッシュ・シティ・グリル>の濡れたTシャツ決勝戦まで見逃すことになるのか」
白髪まじりの老ベテラン潜水夫はむっつりふさぎこんだ。「あのかわい娘ちゃんたちは先月の末、なかなかけっこうなおっぱいを見せてくれたんだがなぁ」
「おれも心が痛むよ、ガストン」とわたしはいった。「なあ、一回潜って、油を漏らしているものを調べるだけでいいんだ。それから錨を揚げてそのままヂュラックへ入港する。あんたは油田用の埠頭の駐車場に小型トラックをとめてあるな。たぶんラストオーダーに間に合うようにモーガン・シティへ戻れるんじゃないかな。帰り道でビールの6本パックを飲みすぎなきゃだが」』
-- COMMENT--
 久々の本格"海洋冒険ミステリ"。著者自身が潜水士や船長の仕事をしていたそうで、二次大戦中のUボートの戦闘場面、雷撃により損傷した推進器を別の沈没艦から引き揚げ、米軍PBY-5カタリナ飛行艇の執拗な攻撃から逃げるなど迫真のシーンの連続!! また、Uボート艦長と米国潜水支援船の船長との敵味方のなかにも芽生える船乗り同士の心の交流などが味わい深く、ただの歴史戦記ものを越えた仕立てになっている。
 現代になって沈没した113号の発見にいたる引用の部分にだけ車らしきものが登場していたので、やや強引ながら書き抜き。(2008.3.20 #538)


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