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BOB MORRIS /ボブ・モリス

震える熱帯450SLコンヴァーティブルBAHAMARAMA (C)2004高山祥子訳 講談社 2006

『門までの半分も行かないうちに汗まみれになり、白いシャツが背中に張り付きジーンズをはいた足を汗が伝いおりた。黒のエスカレードから目を離さないまま、門に近づいていった。予定外のことだった。バーバラが1979年型450SLコンヴァーティブル、19万キロも走ってもなおやる気満々の愛車で迎えに来ているはずだった。彼女はその車を"イエロー・バード"と呼んでいる。
「歌よ」どうしてそう名づけたのかときくと、彼女は答えた。
「あんな歌」おれは言った。
「好きなのよ」
「マミジロミツドリがたくさんいるところで朝飯を食べたことがあるか?」
「歌のなかのイエローバードだよ。島で朝飯を食べてると、どこからとももなく集まってくる。あちこち飛びまわって…テーブルにのってきて、パンをつついたりバターに嘴をつっこんだりする。追い払ってもこりずに戻ってきて、テーブルクロスに糞をする。あれが、そのイエローバードだぞ」
「まあ」バーバラは言った。「歌はすてきだわ」
知り合ってからの3年間で、バーバラとの会話でけんかに一番近かったのがこれだった。』
--COMMENT--
 マイアミ周辺をを舞台にするフロリダ・ミステリには目がなくて、著者の処女作をさっそく。チャーター船業のザックの客が密輸ギャングで、知らずにのせて2年間も刑務所いきに。おつとめを果たして出所するときのシーンが引用の部分。それから何故かギャングに追われたり、誘拐事件に巻き込まれたりする。元アメフト選手のわりには、はなばなしいアクションがあるわけではなく、ストーリーの遅い展開にはイライラさせられたりするけど、フロリダ・ミステリの味わいはたっぷり。
 冒頭のギャングの出迎え車がキャディラック・エスカレード、途中で拾ってもらった学生サーファーのおんぼろボルボ、ザックの22年ものジープ・ワゴニア、友人からまた貸してもらう89年型フォードF-150、バハマ・ハーバー島の警官の"白いミツビシのワゴン"…などが登場する。(2007.5.17 #477)


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