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OUELLETTE, PIERRE /ピエール・ウーレット

デウス・マシーンレクサス・ミニヴァン,ミアータTHE DEUS MACHINE, (c)1993ベネッセ,1994

『ヴィクター・シールズはポートランドの南郊、ウェスト・リンにある豪勢な自宅の書斎にいた。この家は建坪 170坪以上あり、さらに車が三台はいるガレージと庭がついている。ヴィクターは立ったままグレンフィディックのオンザロックをちびちび飲みながら、向かいの家の車よせにとまっている車を見ていた。一台は後ろのパネルがぼこぼこになったフォードのステーションワゴン。もう一台はシヴォレーのミニヴァンで、助手席のドアは灰色の下塗りが見え、タイヤもつるつるになっている。この車よせの奥にあるガレージには、最新型のBMWレクサス・ミニヴァンの新車とよく手入れされたマツダ・ミアータが入っている。向かいの家は広さも価格もヴィクターの言えとまったく変わらず、防犯灯が前庭の芝生を照らしている。
 新しい邸宅のまわりにおんぼろ車がはびこっている光景は、この地域が直面している問題の完璧な縮図だ、とヴィクターは嘆息した。彼はたった今、隣のブロンソン家で行われた夜の集会から戻ってきたところだ。集会は思ったより時間がかかり、始まったときと同じ陰鬱な雰囲気で終わった。議題はもちろん、[新住民]という名前で呼ばれるようになった人々のことである。』
--COMMENT--
図書館でなんとなく手にとった小説だが、最近コンピューターの将来に関心を抱いていたこともあり、いわゆるその自立知能を題材にしたテクノスリラーの緻密な組立とストーリーテリングのうまさにとても感心した。近ごろ読んだもののなかで最もインパクトが強かった。
 “超”コンピューターの開発会社社長ヴィクターの家のまわりの車の風景が上のシーン。この小説の時点が2008年なのだが、レクサス・ミニヴァンとミアータがまだ高級モデルと思われていることは幸いである。 (95/02)


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