Pelecanos George P./ジョージ・P・ペレケーノス
魂よ眠れ | カプリス・クラシック ほか | Soul Circus (C)2003 | 横山啓明訳 早川 2006 |
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『カプリス・クラシックでジョージア通りを走りながら、ストレンジはスタイリスティックスのデビュー・アルバムをカセットに入れた。"BETCHA BY GOLLY, WOW"が始まり車内はハーモニーに満ちた。ストレンジは小声で歌を口ずさみ、時おり目を閉じて、ボーカルの高い声についていこうとした。
「おい、気をつけてくれよ」クインが注意した。「ぐっとくるたびにそうやって目をつぶっていたら、おれたち、死んでしまう」
「目なんかいらないさ、記憶で運転してるんだ」
「それにそんな高い声を出そうとすると、ジーンズの縫い目が弾けとぶぜ」
「おいおい、こいつが美しくないなんていうなよ」
「おれにわかるのは、ドラマティックだっていうことだな。よくわからないが、オペラとかそんなようなものだろう」中略
「このグループのアルバムはみんな持っているのか?」
「《ラウンド2》だけ買い逃した。先週も同じことを訊いたぞ」
アナコスティアに入り、緑の丘陵地帯を走った。太陽はまぶしく、葉叢に光の粒子がたわむれる。地元の人たちは、ポーチに出て、歩道で話し込み、あるいは庭仕事に精をだしていた。』
--COMMENT--
黒人私立探偵<ストレンジ・シリーズ>3作目。昔、恩義があったことからギャングのボスの死刑判決を覆す調査をしながらワシントンDCの裏面の抗争を暴く社会派ハードボイルド。引用は、仲間のクインとの車中での会話で、こんなストレンジの好みの音楽がたくさん出てくるのも楽しい。
ストレンジの"パトカー風89年型シヴォレー・カプリス"、銃の密売屋の"パールレッドの97年型エルドラド・ツーリング・クーペ"、いかれたギャングの"ニッサン240SX、Zに見せかけたいのだが貧弱な…"、助手クインの"中古のシェベル"、証人の"おんぼろトヨタ・ターセル"、他のギャング仲間の"シルヴァーブルーのアコード"、ギリシャ人探偵の"赤地に白いラインのダッジ・コロネット500"、ヤク密売グループの"金色のホィールをつけた赤いカムリ・ソラーラ"など。(2006.10.26 #442)
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