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PETERS, ELIZABETH /エリザベス・ピーターズ

裸でご免あそばせトヨタNAKED ONCE MORE, (c)1989徳間,1993

『車はそんなにびっくりするほどオンボロではなかった。
息子はもっと情けない車をもっていた。フロント・グラスはないわ、ブレーキは雨降りの火曜日にしかきかないわ。それにくらべたらだいぶまし。右に回りがちで、マフラーは穴だらけか、ないかのどっちか。燃料ゲージは空のところでとまっている。それは予測していた。息子の車はいつもそうだった。親にかりた車まで、いつもタンクを空っぽにしていた。ティーンエイジャーが親の車をかりると、かならずガス欠寸前で家に帰ってくるのはほとんど魔法に近い。
 エクソンのスタンドによると、ジョーは好奇心と哀れみのいりまじった口調で言った。「おやおや、ミセス・カービー。まさかその車で遠出するんじゃないだろうね。ギアがそういう音をたてるようになったら、もうおしまいだぜ。自分の車はどうしたんだい。故障したのかい」
「いいえ、変装のためよ。レンタル用の車はある?」
「悪いね。一台は記者に貸しちまったし、もう一台はキャブレターを修理しなきゃならねえんだ。あと二時間ほど待ってくれりゃー」
「待てない。だいじょうぶよ。何とかなるわ」
 目的地に着いたのは正午近くだった。時速45マイルを越えると、車体が激しく揺れ出すので、安全運転を余儀なくされた。』
--COMMENT-- ピーターズ(本名バーバラ・G・メルツ)の初翻訳ロマンチック・ユーモア・サスペンス。軽くてこぎみいいウイットにとんだ作品でした。たまには、こんなしゃれたミステリーもいい。
上にでてくる女流作家ミセス・カービーが7年前になくなったベストセラー作家の作品の続編執筆を依頼され、その失踪事件にまきこまれる。上のオンボロ車と彼女自身の車の名前はでてこないのでそれほどクルマにこだわっていないはずだが、ほかに[芥子色のトヨタ]、[モリーの青いトヨタ]と”トヨタ”だけ車名が登場する。(95/02)


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