lagoon symbol
PIERCE, DAVID M. /デイビット・M・ピアス

風の音を聞きながらワーゲンキャンパーHEAR THE WIND BLOW,DEAR, (c)1989早川書房,1994

『それから荷物を片付け、事務所に鍵をかけて手紙を角の郵便ポストに投函し、ミセス・モラレスに手を振って、サラをつれてヴィクトリー通りを走らせ、映画スタジオの一画を通り過ぎ、馴染みの中古車販売店に向かった。そこには最新モデルから小型バン、おんぼろ自動車、クラシックカー、トラックまでなんでも揃っていた。キャンパーも奥の方にずらりとならんでいる。係りの男はいった。ドアは開いているから適当に見てくれ、乗ってみたかったら、キーを取りにきてくれればいい。
「キャンパーのことはどれくらい知っている?」とサラに聴いた。じつはサラは、豪勢な古いプリマス48年型、ライトブラウンとダークブラウンのツートンカラーでオリジナルクローム仕様、マニアなら見ているだけで涎が出てきそうな名品の前で立ち止まって、鼻で笑ったのだ。
「ぜーんぜん。よくこんながらくたを作ったものね。そっちは知っているの?」
「困らない程度にはな。おやじが昔一台持っていたんだが、そいつで旅行に連れていってくれたのは、記憶ではただの一度だけだ。そうこうするうちにショックアブソーバーかなにかがいかれて、結局うっぱらっちまったよ」
 手ごろなキャンパーが一台あった。フォルクスワーゲンの改造車だった。 「トイレはどこ?」
「まさかいましたいってんじゃないだろうな?」といって、そこだよ、とスライドドアの向こうの大きなドアを指さした。』
--COMMENT--
 94年の気持ちのいいミステリーで、誰かが推薦していた一冊。ロサンゼルスを舞台に気だてのいい大男の探偵が事件の解決をしていく軽いハードボイルド。彼と街の仲間たちのしゃれた会話がなんとも魅力であった。
 上記は、主人公のヴィクター・ダニエルが麻薬栽培の犯人を追いつめるための足としてのキャンパーをアシスタントのパンクの女の子のサラと探しにいくシーン。自分の車は「ナッシュ」と呼んでよくでてくるが、多分それなりに凝った車のようである。ほかには、犯人グループのレンジャーがトヨタハッチバックに乗っていたりする。(95/09)


作家著作リストP Lagoon top copyright inserted by FC2 system