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POLLOCK, J.C./J.C.ポロック

復讐戦トヨタランドクルーザーPLAYBACK, (c)1989早川文庫,1991

『マリクが倉庫の横のドアから表に出ると、ちょうどトヨタのランドクルーザーが通りから鋭く折れて横道に入ってきた。彼は運転席の男がうなずくのをちらっとみながら、ドアをあけて、後部座席にSADMを慎重におき、自分も車に乗り込んだ。
 コロンの町から15マイルほど離れた田園地帯では、双発のセスナが草地の荒れた滑走路脇に待機していた。草原の彼方からトヨタのランドクルーザーがスピードを上げて近づいてくるのをパイロットが目にすると、せき込むようなエンジン音に続いて、セスナのプロペラが回転し始めた。
 マリクはセスナの後部座席にSADMをしっかりと固定した。彼が前に回って副操縦士の座席を占めると、セスナはふだん滅多に使われていないでこぼこの滑走路を走り出した。やがてふわりと宙に浮いたセスナは、高度500フィートまで上昇を続けて水平飛行に移ったあと、海上に数マイル出たところでゆっくりと北よりに針路を変えた。
「所用時間は?」マリクはたずねた。
「2時間半たらずです」パイロットは答えた。
 マリクはシートに腰をおちつけて体を楽にした。黒ずんでいく水平線を眺めながら、彼は期待に胸を膨らませ、微笑みをうかべた。もう何もこの俺を止められない、と彼は思った。何も。』
--COMMENT-- ポロックが得意とする米軍特殊部隊デルタフォースのスペシャリストを主人公とする冒険サスペンス。波乱万丈のスピーディな展開、最新兵器のラインアップ、ジャングル戦闘など迫力のある作品になっている。  上の引用は、主人公が追いつめるKGBテロリストのマリクがニカラグアで野戦用核兵器を運ぶシーンであり、辺鄙なジャングルで活躍する車として、定番のランドクルーザーが登場する。(93/12)

狙撃BMW,ミニ・モークTHREAT CASE, (c)1991早川,1993

『スモークドガラスのBMW7シリーズのセダンが暮色に染まるマイアミのスカイラインを背にドルフィン高速道路を西に向かってなめらかに走っていた。ジョージ・マドリガルは、オフィスからデード郡南西部郊外の典型的なアッパーミドルの自宅までの通いなれたいつものコースをたどっていた。妻と二人の娘を持つ不動産ブローカーで、地域活動にも参加するマドリガルは、まさに中流階級上部の人格者の見本だった。
マドリガルが車のスピードをおとし、南に折れてパルメット高速に入ると、自動車電話のベルがなり、彼は受話器をとった。むろん、セル方式電話は傍受されないと聞いていたマドリガルは何の危惧も抱かなかった。
 しかし、それは誤った安心感だった。セル方式電話は安全な通信手段であると言う一般に広まっている神話は、秘密情報活動の世界のエレクトロニクスの魔術師たちによってかなり以前に打ち砕かれていた。信号解読装置を備え、特定地域におけるセル方式チャネルのもを探査するようプログラムされた高性能スキャナーは、移動電話が使われると数秒以内にその交信電話をキャッチし、その周波数を特定する事ができるのだ。
 マドリガルは気づいていなかったが、BMWの半マイル後方を走る、カーペット・クリーニング会社の社名とそのマークをつけた銀色のヴァンが、いままさにその作業をやっているところだった。』
--COMMENT--
CIA、シークレット・サービスとテロリストの対決を得意とするポロックの「大統領暗殺」もの。
上記のマドリガルは北米麻薬組織の受け渡し役でもあり、BMWは格好の車といえる。他に、元デルタ・フォースのスナイパーが使う車として、珍しいミニ・モークが登場するが、超一流の暗殺者にしてはめだちすぎる車のような気がする。(93/06)

終局の標的チェロキーENDGAME, (c)2000広瀬順弘訳 早川,2000

『彼女は左折のウィンカーを点滅させてサイドミラーとバックミラーに目をやり、いちばん外側の車線へ移ろうとした。そのときだった。一台のグリーンのBMWが車間距離を危険なほどつめて、二人の車のバンパーのほんの数フィート後ろをつけてくるのに彼女は気づいた。
「あのばかをを見て。もうちょっとでも近づいたら、私たち、ドッキングすることになるわ」
と、突然、BMWは車線を変更して、右側からジャネットたちを追い越しにかかった。たちまちチェロキーの横に並んだBMWにスタフォードが目をやると、その運転席の窓ガラスは下りていて、ドライバーが不気味な薄笑いをうかべて彼を見ていた。
と、その顔から薄笑いが消え、手には銃が握られていた。
「銃だ!」スタフォードがそう叫んだ瞬間、ジャネットも視界の端にその銃を捉えた。彼女はめいっぱいアクセルを踏み込んだ。BMWのドライバーはたてつづけに4発発射した。』
--COMMENT--
 最近はちょっとご無沙汰だったポロックです。元デルタフォースの男がCIAの裏金"スーパーノート"を偶然手にしたことから事件に巻き込まれる・・・例の、ド派手なカーチェイス・銃撃戦が健在でした。たまには、こんな単純明快なアクションものも楽しい。主人公スタフォードは定番のチェロキーで、仲間の男がメタリック・シルバーのポルシェ・キャブリオレ、CIAのチームのランドクルーザーなど。ランクルは、このところ登板がなかったので久しぶり。(2001/06/02)


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